問題
ヒトの体細胞には染色体は通常何本あるでしょうか?
①8本(4対) ②16本(8対) ③46本(23対) ④78本(39対) ⑤90本(45対)
解説
遺伝情報はDNAの塩基配列という形で細胞1つ1つの中に保存されています。
DNAにふくまれる情報量は膨大であり、壊れないように保管することはもちろん、必要なときに取り出したり、細胞分裂のときには「複製」をつくってきっちり2等分する必要があります。
そこで、DNAは「ヒストン」というタンパク質にぐるぐる巻きにしてまとめられています。
ちなみにこの「DNAとヒストンの複合体」のことを「クロマチン」とよびます。
さらにたくさんの「クロマチン」がひとかたまりになって「染色体」という構造体を形成しています。
よく見るとたしかにより細かい構造体が集まっていますね。
私がはじめて勉強した頃は、必ずといっていいほど「クロマチン」を「カセットテープ」に例えて教わっていたのですが、みなさんの世代的にはぴんとこないかもしれません。
現代でいうと、「DVD」で例えるのが最も近いです。
「DVD」には膨大な情報量が入っていますね。
膨大な「遺伝情報」が「クロマチン」という「DVD」にまとめて収められています。
それでもまだ情報量が多いので、複数の「DVD」をまとめて「DVDボックス」にしたものが「染色体」です。
染色体の数は種によって決まっているため、本問は「ヒトの遺伝情報のDVDボックスは何巻まであるでしょうか?」という意味になります。
ただしテープが巻かれているイメージが本当にぴったりなので、カセットテープ以上の例えはないように個人的には思います。
さて、本題であるヒトの体細胞の染色体数は46本(23対)です。
さらっと「体細胞」や「対」ということばを使って説明しましたが、実はここも非常に重要なポイントです。
からだを構成する「細胞」には、大きく分けて「体細胞」と「生殖細胞」の2種類があります。
かんたんにいうと「生殖細胞」は精細胞や卵細胞といった「子孫を残すための細胞」であり、「体細胞」はそれ以外の全ての細胞です。
「生殖細胞」は生殖を行う特殊な細胞であり、染色体の数は「体細胞」の半分しかないのです。
また、「体細胞」の染色体も46本全てが異なる形や大きさではなく、「2つでペア」となっています。
つまり、形や大きさが全く同じ染色体が2つずつ存在しているのです。
麻雀でいうと七対子(チートイツ)の状態です。この例えはわからなければスルーしていただいて大丈夫です。
この形や大きさが全く同じ染色体のことを「相同染色体」とよびます。
したがってヒトの染色体は46本ですが、正確には「23対46本」となります。
ちなみに、「生殖細胞」では「相同染色体」がペアで存在せず、各1本ずつしか存在しないため染色体数が半分の23本になります。
また上の図をみるとわかるように「1」~「22」までは番号がふられていますが、最後の2つは「X」と「Y」となっています。
番号がふられている染色体を「常染色体」、「X」と「Y」を「性染色体」といいます。
それぞれ「1番染色体」「2番染色体」・・・・と「X染色体」「Y染色体」とよばれます。
「性染色体」は遺伝的な性別を決定する染色体で、「常染色体」はそれ以外の形質を決定する染色体です。
「遺伝的には」、男性は「X」と「Y」を1本ずつもち、女性は「X」を2本もちます。
なぜ「遺伝的には」と強調したというと、遺伝的な性別と生物学的な性別、自ら認識している性別は必ずしも一致していないことがあるからです。
この点についてはより複雑なしくみになるため、今回は割愛します。
まとめると、ヒトの体細胞では通常「22対44本」の「常染色体」と、「1対2本」の「性染色体」の、合計「23対46本」の染色体をもちます。
「核型」という表記法では「2n=46」と表すことができます。
以上から正解は③46本(23対)となります。
ちなみに、他の選択肢は
①8本(4対)⇒キイロショウジョウバエ
②16本(8対)⇒タマネギ
③46本(23対)⇒ヒト
④78本(39対)⇒ニワトリ
⑤90本(45対)⇒サツマイモ
です。
「動物だから染色体が多い」や「知能が高い動物の方が染色体が多い」などの法則がないのがおもしろいですね。
仮説でも良いので染色体の数の法則に気づいた方がいれば教えてください。
解答
③46本(23対)