問題「心臓まひに対して有効なのはどっち?」
心室細動に対して有効なのはペースメーカーとAEDのどちらでしょうか?
解説
心臓は、拍動することにより血液を心臓から送り出し、全身の組織に届ける「ポンプ」の役割を果たしています。
心臓は多数の心筋細胞で構成されていますが、それぞれの心筋細胞が同調していっせいに収縮することで心臓全体が拍動します。
そして、心臓の上部(右心房側)に存在する「洞結節」の刺激が「刺激伝導系」というしくみによって心臓全体に伝わることで、心筋細胞がいっせいに収縮することが可能となります。
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ところが、何らかの原因によりこのしくみが正常にはたらかなくなると、心臓に大きな問題が起こってしまいます。
まずは、「心室細動」という状態です。
それぞれの心筋がばらばらに収縮している状態で、心臓はブルブルとふるえているだけであり「ポンプ」としての役割を果たすことができません。
いわゆる「心臓まひ」の状態です。
この状態になってしまうと、「洞結節」ががんばって「いっせーのせ」の合図を送っても効果はありません。
テンションMAXで走りまわっている子どもたちに小さな声でささやくようなものです。
この状態を解消するためには、1回校長先生や園長先生にしかってもらって冷静になってもらう必要があります。
「心室細動」のときに、そのような役割をするのが「除細動」です。
いわゆる「電気ショック」です。
電気による刺激を与えることで、収縮のタイミングが合わなくなってしまった心筋細胞に強力な「いっせーのせ」の合図を送り、リセットするのです。
もともとはいい子の心筋細胞たちなので、1回足並みがそろえばあとは元の通り「洞結節」の合図による拍動が再開します。
その「徐細動」を、医療の専門家でなくても速やかに行うことができる装置が「AED」です。
駅や病院、学校などで1度は目にしたことがありますね。
AEDの中にはパッドが2枚入っており、パッドを胸に貼ると自動で「心室細動」の状態かどうかを判断してくれます。
そして、「除細動」の必要があれば、ボタンを押すと電気刺激が加わります。
「心室細動」の場合は秒単位での時間との勝負なので、疑わしい場合は速やかに「除細動」を行う必要があります。
さまざま公共施設に設置されているのはそのような理由からです。
「ペースメーカー」ということばも耳にしたことがあると思いますが、「除細動」とは全く異なる状態を治療する機器です。
「ペースメーカー」は主に「洞不全症候群」や「房室ブロック」という不整脈などに対して使われます。
「洞不全症候群」は「洞結節」からの「いっせーのせ」の合図が出にくくなる状態です。
「房室ブロック」は「洞結節」からの合図は出るけれど、心房と心室の間で伝達されない、あるいはされにくくなるため心臓全体に伝わらない「刺激伝導系」の異常です。
ともに程度が重くなると、正常に拍動が起こらなくなってしまい、さまざまな症状を引き起こします。
そこで「ペースメーカー」の出番です。
「ペースーメーカー」は人工的に電気刺激を発生させることにより「洞結節」の合図や「刺激伝導系」の代わりやサポートをすることで、心臓の正常な拍動を保つことができる機器です。
「ペースーメーカー」自体は心臓近くの皮膚の下へ埋め込み、そこから心臓内に導線が伸びています。
定期的に電池交換は必要ですが、「洞結節」と同じように電気刺激をくりかえし発生し続けることができます。
余談ですが、テレビドラマなどで目にする「心臓が止まり心電図が『ピー』と平坦になった状態で、電気ショックをかけたら心拍が再開した」というシーンは、演出上の都合もあると思いますが実は実際の医療とは異なる点があります。
どこが異なるのでしょうか?
理由はここまでの内容から推測することができます。
「電気ショック」すなわち「徐細動」はそれぞれの心筋細胞がばらばらに収縮している状態に対して、「いっせーのせ」の合図をかける治療でしたね。
「心電図が『ピー』と平坦なった状態」は「心静止(アレスト)」といい、心筋細胞が収縮せず心臓が停止している状態です。
収縮自体をしていない心筋細胞に「いっせーのせ」と合図を送っても効果はありませんね。
つまり、「心静止」の場合は心臓マッサージや心臓を動かす薬を使うなどして、先にブルブルとふるえる「心室細動」の状態にする必要があるのです。
「心室細動」の状態となってはじめて「除細動」の効果が期待できるのです。
以上から心室細動に対して有効なのは「AED」となります。
解答
「AED」