Q、1歳や2歳のまわりの子がみんな習いごとや塾に通っていると知りあせっています。
やっぱり早期教育は受けさせた方がいいのでしょうか?
早期教育とは?
早期教育とは、その名の通り通常よりも「早期」のうちに子どもに教育を受けさせることです。
厳密な定義はありませんが、一般的には義務教育が始まる小学校入学より前の時期に行う教育のことをさす場合が多いです。
特に近年では、0歳や1歳など非常に早い段階から積極的に何かしらのアプローチを始める方が多くなっています。
実際「知能は低いより高い方がいい」と考える方が多数派である思われますし、「知能が高いほど将来高い収入を得やすくなったり、幸福度が高くなりやすい」という報告もあります。
したがって「早期教育によって我が子の知能が高くなるのであれば、できることは早いうちからしてあげたい」と考えることは子を持つ親にとって自然な考え方です。
お友達など身近が人が子どもにいろいろさせていると、「うちの子も何かさせた方が良いのではないか?」と不安にもなりますね。
そして、世の中にはさまざまな種類の「早期教育」が存在します。
習いごととして一般的なピアノや水泳などはもちろん、英語教室、「知育」や「脳を鍛える」ことなどを目的とした早期教育を提供する塾や幼稚園、小学校の先取りを行う塾、私立幼稚園や私立小学校受験に特化した塾など選択肢はいくらでもあります。
しかし、早期教育は本当に子どもの知能を上げるのでしょうか?
むしろ子どもにとってマイナスになることはないのでしょうか?
そこで今回は「子どもに早期教育を受けさせた方がいいか?」について解説します。
3歳までに子どもの脳はほとんど完成する
まず、「3歳までの環境や刺激が子どもの脳に与える影響は大きい」ことはおそらく事実です。
大脳生理学の研究によって「人間の脳は3歳まで80%完成する」ことがわかっており、他の研究でも早期からの「話しかけ」や「絵本の読み聞かせ」などが子どもの脳の発達に好影響を与えるという報告があります。
したがって、早い時期からさまざな経験をさせてあげること自体は理にかなっているといえます。
早期教育が知能に与える影響は小さい
その一方で、「早期教育が知能を一時的に高くするが、小学校低学年~中学年でその影響はなくなる」という報告もあります。
ニューヨーク大学が行ったメタ分析でも、「早期教育は知能指数(IQ)に影響を与えない」という結果がでています。
一見驚きの結果にもみえますが、少し考えれば決して意外なことではありません。
例えば、毎日くりかえし1から10まで数えさせたり、九九を暗唱させたり、計算練習をさせればおそらく他の子より早く算数の実力が上がります。
しかし、大切なのは「1から10まで数えられること」ではなく、『多い』『少ない』などの数の概念を理解したり、算数や数学の考え方や楽しさを知ることなどです。
そこを飛ばして「技術」だけ習得してもテストの点数などが一時的に上がるだけです。
さらに、もしその子が怒られながらいやいやできるようになったとすると、才能があっても算数自体を嫌いになってしまうかもしれません。
反対に、「お勉強」としての進度が平均的であったとしても、「数」に対する楽しさや好奇心を感じながらできるようになった子が、その後早期教育を受けた子を一気に追い抜いても不思議ではありませんね。
おすすめの早期教育
誤解のないように申し上げておくと「早期教育は無意味」と申し上げるつもりは全くありません。
前述の通り、早い時期の刺激は脳への影響が大きいため、「良い刺激」となるのであれば積極的に早期教育を行った方が良いと思われます。
実際、早い時期から複雑な人間関係を構築することは脳へ良い影響を与えるとされており、家庭とも保育園、幼稚園とも異なるコミュニティに属し非日常な経験を得られるという意味においては早期教育を行う塾は効果的であると私は考えます。
それでは、実際にどのような早期教育を行えばいいのでしょうか?
それは「本人が興味を示したこと」「本人が楽しんでいること」に可能な限り取り組ませてあげることです。
早い時期からいろいろな遊びをさせてあげたり、いろいろ場所に連れて行ったりと、多くの経験をさせてあげ、興味をもったり熱中して取り組んでいることは見守りながら可能な限り本人が納得するまで取り組ませてあげるのです。
興味をもったことに熱中して取り組むことで、「自分の頭で考え、悩み、決断し、行動し、振り返り、再び考え、悩み、決断し・・・」という試行錯誤の手順を身につけやすくなります。
いわゆる「アクティブラーニング(能動的学習)」とよばれるものです。
有名なPDCAサイクル(plan, do, check, act)とも共通する点が多いですね。
アクティブラーニングによって近年重要性が注目されている「自制心」や「やりぬく力」などの「非認知能力」も養うことができます。
すなわち、「興味をもつきっかけをつくり、それに熱中できる環境を整える」ことこそ親やまわりの大人が子どもしてあげられることであると私は考えます。
これらの点につきましては、別記事「非認知能力とは?」「子どもの才能を発見する!失敗しない習いごとの選び方」でも解説します。
以上今回は「早期教育が子どもに与える影響」について紹介しました。
まとめ
・「先取り学習」などの早期教育は長期的には子どもの知能へ与える影響は小さい
・3歳未満の早い時期にさまざまな経験をさせたり、親以外との人間関係を構築することは重要
・興味をもつきっかけをつくり、興味を示したことに熱中できる環境を整えてあげることがおすすめ