食道疾患③:食道・胃静脈瘤ってどのような病気?

Q、食道・胃静脈瘤ってどのような病気ですか?

 

食道・胃静脈瘤ってどんな病気?

食道・胃静脈瘤は食道や胃の静脈が拡張して瘤(こぶ)をつくってしまう病気です。

症状は通常何もありません。

それではなぜ瘤ができてしまうことが問題なのでしょうか?

それはもし瘤が破裂してしまうと大出血を起こして命の危険があるからです。

そこで症状がなくても発見された場合は、破裂しにくくする治療を行うのです。

 

なぜ瘤(こぶ)ができてしまうの?

ところでなぜ瘤ができてしまうのでしょうか?

それは「流れる血液の量が増えるから」です。

もともと血液がちょろちょろとしか流れていない血管に大量の血液が流れこむことによって血管がぱんぱんにふくらんでしまうのです。

おだやかな小川が大雨で増水しているようなイメージです。

瘤ができるおおもとの原因は肝硬変という肝臓の病気であることが多いです。

小腸や大腸と肝臓の間には「門脈」という大切な血管があります。

小腸や大腸で吸収したものを、肝臓へ運ぶ「直通線」のような役割をもつ血管です。

肝硬変はその名のとおり「肝臓ががちがちにかたくなってしまう」病気です。

がちがちにかたくなると門脈から肝臓に血液が入りにくくなってしまいます。

すると門脈を流れる血液は渋滞を起こしてしまいます。

その結果、門脈の圧力(門脈圧)が高くなります。

渋滞してしまった血液は、行き止まりになってしまった肝臓を通らずに心臓に帰らなければなりません。

(門脈をふくむ静脈を流れる血液は全て心臓にもどります。これは「循環器」であらためて説明します)

そこでぬけ道をつかってまわり道をして心臓へ帰ります。

そのぬけ道こそが食道や胃の静脈なのです。

しかし、もともとたくさんの血液が流れる血管ではありません。

そこへぬけ道を求めて血液が殺到すると、結果的にそこでも渋滞が起こってしまいます。

これが食道や胃の静脈に瘤ができるしくみです。

 

食道・胃静脈瘤の症状は?検査は?

検査は内視鏡(先っぽにカメラがついた細い管)を使っておこないます。

口や鼻から内視鏡を入れて食道や胃の表面を直接観察すると、拡大してふくらんだ血管を確認することができます。

場所や形だけでなく色も大切で、青や白ではなく赤くみえる静脈瘤は破裂する可能性が高く危険です。

他にもバリウムなどX線(レントゲン)で白く写る液体を飲んでからX線を撮ることでも静脈瘤を確認できます。

静脈瘤があっても普段は何も症状はありません。

しかし、1度破裂すると大量に出血し、血を吐きます。

出血が多すぎるとからだの中の血液の量が減り、血圧が下がり、命の危険があります。

そこで、静脈瘤がみつかった場合は破裂しないように予防の治療をおこないます。

 

食道・静脈瘤の治療は?

静脈瘤が破裂すると一大事なので、なるべく破裂しないようにする治療を行います。

治療のときも内視鏡を使います。

内視鏡はカメラで撮影するだけなく、先っぽから水鉄砲のように薬を注入したり、ものをつかんだりもできます。

そこで、食道や胃の表面をかたくする薬を注入したり、瘤を糸でしばることで破裂する可能性を低くします。

レーザーで表面を焼く場合もあります。

 

もし破裂してしまった場合は緊急事態です。

まずは血圧が下がりすぎないように命を守るための治療をおこないます。

そして、それと同時に出血を止めるための治療をおこないます。

治療は瘤の破裂を予防するときの治療で先ほど説明した、内視鏡をつかった治療(食道や胃の表面をかたくする薬の注入、瘤を糸でしばる)をおこないます。

また一時的な治療として、先の方に風船がついたくだを口から入れ、食道や胃の中でふくらませて出血部位を圧迫して止血を試みます。

ただし、肝硬変の状態ではもともと出血を止めるはたらきが弱くなっている場合が多く、止血はかんたんではありません。

破裂しにくくする治療がいかに大切かがわかりますね。

 

以上、今回は食道・胃静脈瘤について解説しました。

 

まとめ

食道や胃の中の静脈が拡張して瘤(こぶ)を形成する疾患。

肝硬変などが原因で門脈圧が上昇することによって起こる。

症状:

普段は無症状。静脈瘤が破裂すると大量に吐血する。

検査/診断:

上部消化管内視鏡で静脈瘤の色や血管を確認する。

治療:

静脈瘤を破裂しにくくするため、内視鏡で硬化薬を注入したり瘤を結紮する。

破裂してしまった場合は救命処置(輸液・輸血、酸素吸入など)を行いながら、内視鏡で硬化薬を注入したり瘤の結紮を試みる。

難しい場合は、鼻からバルーンのついたチューブを入れ、内部でバルーンを膨らませて圧迫止血を試みる。

門脈圧を下げる薬を注射する場合もある。