問題
次のうち発酵によってできるものはどれでしょうか?全て選んでください。
①エタノール ②乳酸 ③酪酸 ④クエン酸
解説
ヒトをふくむ動物や植物はみな、生きるためのエネルギーを得るために「呼吸」を行っています。
「呼吸」は、酸素を消費してグルコース(C6H12O6)が水(H2O)と二酸化炭素(CO2)まで分解され、計38ATPものエネルギーが産生されます。
それでは酸素がない環境では、どのようにエネルギーを得れば良いのでしょうか?
呼吸の3つの過程のうち、「クエン酸回路」と「電子伝達系」は酸素がない状況でははたらくことができませんが、グルコースをピルビン酸に分解する「解糖系」は酸素がない状況でもはたらくことができます。
問題最も多くのエネルギーをつくりだすことができるのは、呼吸のどの過程でしょうか?①解糖系 ②クエン酸回路 ③電子伝達系解説からだのあらゆる臓器や器官が活動するためにはエネルギーが必要です。そして、そのエネルギーを[…]
そこで、酸素がない、あるいは少ない環境でも、主に解糖系を活用してエネルギーを得ることができるのです。
ただし、「解糖系」で得られるエネルギーはわずか2ATPであり、「エネルギー効率の悪い」すなわち「ムダの多い」方法でもあります。
このように、酸素に依存せずにATPを合成する過程を「発酵」といいます。
また、解糖系でつくられた「ピルビン酸」は「呼吸」ではクエン酸回路へとまわりますが、「クエン酸回路」が機能しない「発酵」においては別の物質に変えられます。
「発酵」の結果どの物質ができるかは、「発酵」を行う微生物の種類によって異なります。
「発酵」の中でも「アルコール発酵」、「乳酸発酵」、「酪酸発酵」の3つが有名です。
「アルコール発酵」はその名の通り「アルコール」すなわち「エタノール」をつくる発酵です。
「酵母菌」によって行われ、ビールやワインなどのお酒やパンをつくるときにも利用します。
化学反応式は
C6H12O6(グルコース)→2C2H5(エタノール)+2CO2(二酸化炭素)
で表すことができます。
「乳酸発酵」は「乳酸」をつくる発酵です。
「乳酸菌」によって行われ、ヨーグルトや漬物をつくるときにも利用します。
化学反応式は
C6H12O6(グルコース)→2C3H6O3(乳酸)
で表すことができます。
ちなみに「乳酸発酵」と同じ反応はヒトも行っています。
ヒトは外呼吸(肺での呼吸)と血液の流れによって常に全身に酸素を供給していますが、一時的に酸素の供給がおいつかなくなることがあります。
例えば、短距離走など激しい運動を行っているとき、筋肉では一時的に酸素が不足します。
いわゆる「無酸素運動」です。
「無酸素運動」に対して筋肉の酸素が不足せずに続けられる運動を「有酸素運動」といいます。
このとき、なんとか必要なエネルギーを合成するために「乳酸発酵」と同じ反応を行うのです。
ただし、ヒトが行う場合は「乳酸発酵」ではなく「解糖」と呼び区別しています。
余談ですが、足が疲れたときなどに「乳酸がたまった」という表現が昔からよく使われてきましたが、「乳酸が疲労感の原因となっている」わけではありませんので注意が必要です。
「酪酸発酵」は「酪酸」をつくる発酵です。
「酪酸菌」によって行われ、チーズや香料をつくるときにも利用します。
化学反応式は
C6H12O6(グルコース)→C4H8O2(酪酸)+CO2(二酸化炭素)+2H2(水素)
で表すことができます。
余談ですが、「酢酸」すなわち「お酢」をつくるときに利用されるのが「酢酸菌」が行う「酢酸発酵」です。
「発酵」となまえがついていますが、実はこの反応は酸素を使う反応なので他の「発酵」とは区別されています。
化学反応式は
C2H5OH(エタノール)+O2(酸素)→CH3COOH(酢酸)+H2O(水)
と表すことができます。
エタノールが酸素と反応する(酸化する)反応なので、他の発酵と区別して「酸化発酵」ともよばれています。
以上から発酵によってできるものは①エタノール ②乳酸 ③酪酸の3つとなります。
解答
①エタノール ②乳酸 ③酪酸