胃・十二指腸疾患①:胃・十二指腸潰瘍ってどのような病気?

Q、胃・十二指腸潰瘍ってどのような病気ですか?

 

胃・十二指腸潰瘍ってどのような病気?

胃・十二指腸潰瘍は、胃や十二指腸の表面(粘膜)がえぐれたり穴があいてしまう病気です。

本来は胃や十二指腸は自分自身が消化されないように粘膜をバリア(粘液)でおおって守っているのですが、

何らかの原因でバリアで守り切れなくなり粘膜が消化されてしまうことによって起こります。

 

なぜ胃・十二指腸潰瘍になってしまうの?

バリア(粘液)で守りきれなくなる原因は大きく分けて2つです。

①粘膜を守るバリア(粘液)が弱くなる。

②粘膜を攻撃する力が強くなる。

ゲームで例えると、

「防御力100のバリアに対して攻撃力80の攻撃が来てもダメージは0だが、防御力が50に下がったり、攻撃力が150に上がるとダメージを受けてしまう」

のようなイメージです。

 

粘膜の防御力を決めるのは主に「粘液」と「アルカリ」です。

粘膜全体をおおって直接攻撃から守るのが「粘液」、胃液にふくまれる酸性の塩酸を中和するのが「アルカリ」です。

粘膜やアルカリの量が減ってしまうと防御力が下がってしまいます。

 

一方で攻撃力を決めるのは主に胃液にふくまれる「塩酸」と「ペプシン」です。

「塩酸」は強い酸性であり溶かす力が強く、「ペプシン」はタンパク質を分解する消化酵素であり、ともに胃や十二指腸の粘膜を攻撃します。

ピロリ菌(ヘリコバクターピロリ)に感染していると、さらに攻撃力が高くなります。

 

ちなみに胃は防御力低下の影響を受けやすく、十二指腸は攻撃力上昇の影響を受けやすい特徴があります。

すなわち防御力が低下すると胃潰瘍になりやすく、攻撃力が高くなると十二指腸潰瘍になりやすいということです。

なお、ストレスは防御力低下と攻撃力上昇に両方に関わっており、胃・十二指腸潰瘍の大きな原因となります。

 

胃・十二指腸潰瘍になるとどんな症状がでる?検査は?

胃・十二指腸潰瘍になり粘膜が傷つくと、みぞおちが痛くなります。心窩部痛といいます。

胃潰瘍では食べたものが傷口を刺激するため、食後に症状が強くなります。

十二指腸潰瘍では胃酸の濃度が高くなる食前(空腹時)に症状が強くなります。

吐き気や気持ち悪さもよくみられるのと、傷が深いと便に血が混じったり、血をはくこともあります。

 

口や鼻から内視鏡という先っぽにカメラがついた細いくだ(いわゆる胃カメラ)を入れ、胃粘膜の傷を確認することで診断できます。

 

胃・十二指腸潰瘍の治療は?

治療は大きく分けると

①防御力を上げる治療と、②攻撃力を下げる治療

の2つになります。

①防御力を上げる治療としては、粘膜を守る薬や粘膜を増やす薬を使います。

②攻撃力を下げる治療としては、胃酸の分泌をおさえる治療やペプシンのはたらきをおさえる薬をつかいます。

またピロリ菌に感染している場合は除菌する治療を行う他、アルコールや解熱鎮痛薬など攻撃力を高める物質を控えることも大切です。

くりかえしになりますが、ストレスは防御力低下と攻撃力上昇に両方に関わっているため、ストレスの原因になっていることを取り除くことは特に大切です。

ちなみに潰瘍が深くなりすぎると胃に穴が開いてしてしまう場合があります。

この状態を「穿孔」とよびます。

穿孔を起こしてしまうと手術が必要になる場合もあります。

 

以上、今回は胃・十二指腸潰瘍について解説しました。

 

まとめ

「胃・十二指腸潰瘍」

胃や十二指腸の表面(粘膜)が酸や消化酵素によって傷害される疾患。

粘膜を守るはたらき(防御因子)と粘膜を攻撃するはたらき(攻撃因子)のバランスが崩れることによって起こる。

原因としては、ピロリ菌(ヘリコバクターピロリ)の感染と非ステロイド解熱鎮痛薬(NSAIDs[エヌセイズ])が多く、ストレス、喫煙、ステロイド内服なども原因となる。

症状:

心窩部痛(みぞおちの痛み)、胸やけ、悪心、吐血、下血

検査/診断:

上部消化管内視鏡で病変を確認する。

バリウムなどの造影剤を飲んでX線撮影を行い、潰瘍によるくぼみに造影剤が貯まるのを確認する。

治療:

胃酸の分泌を抑制する薬(プロトンポンプインヒビター[PPI]、カルシウムイオン競合型アシッドブロッカー[P-CAB])や胃粘膜を強くする薬(プロスタグランジン製剤)を投与する。

非ステロイド解熱鎮痛薬(NSAIDs)を使用している場合は中止する。

ピロリ菌(ヘリコバクターピロリ)に感染している場合は除菌治療を行う。

生活習慣の改善(禁煙、食生活の見直し、ストレスの軽減)を行う。

出血している場合は内視鏡を使い止血を試みる。

穿孔を起こしている場合は手術が必要な場合もある。