ピロリ菌とは?

Q、ピロリ菌ってどのような菌ですか?感染するとどのようなことが起こりますか?

 

ピロリ菌とは?

ピロリ菌とは、ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)という細菌です。

胃の中に感染することによりさまざまな疾患を引き起こします。

今回はこのピロリ菌について解説します。

ちなみにヘリコバクターの「ヘリコ」とは「らせん」の意味で、ヘリコプターのヘリコと同じ意味です。

 

胃の中は胃酸があり強い酸性を示すため、通常細菌が生息することはできません。

しかし、このピロリ菌は胃の中で生息することができるのです。

しかも、さまざまな悪い病気を引き起こすのですから実に厄介な菌ですね。

ところでなぜピロリ菌は胃の中で生きることができるのでしょうか?

それはピロリ菌が「塩酸を中和できる」からです。

ピロリ菌はアルカリ性のアンモニアという物質をつくることができます。

アンモニアが胃液にふくまれる塩酸を中和するため、ピロリ菌のまわりだけは強い酸性ではなくなるのです。

例えるなら「燃えさかる炎の中で自分のまわりだけ水をまき続ければ熱くない」ような理屈です。

よりくわしく説明すると、ピロリ菌は尿素を分解する「ウレアーゼ」という酵素をもっており尿素が分解されることでアンモニアが発生するというしくみです。

ピロリ菌はどのような病気の原因になる?

さて、ピロリ菌に感染するとどのような病気を引き起こすのでしょうか?

例えば、以下の病気がピロリ菌の感染に関与しているあるいは関与しているかもしれないといわれています。

例)胃・十二指腸潰瘍、胃癌、急性胃粘膜病変(AGML)、萎縮性胃炎、胃悪性リンパ腫、反応性リンパ組織増殖症、胃粘膜関連リンパ組織リンパ腫、胃食道逆流症、

鉄欠乏性貧血、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、糖尿病、慢性じんましん、パーキンソン病、アルツハイマー病など

特に十二指腸潰瘍になったひとはほぼ100%ピロリ菌に感染しているといわれています。

・・・実に厄介な菌ですね。

先ほど説明したようにピロリ菌は尿素を分解してアンモニアをつくりだします。

このアンモニア自体が胃の粘膜を直接攻撃します。

さらにピロリ菌自体も胃の粘膜を攻撃、破壊する物質を分泌します。

また、このピロリ菌をやっつけるためにからだで免疫の異常反応が起こることによりリンパ節の腫瘍であるリンパ腫などを引きおこすといわれています。

 

ただし、誤解してほしくないのが「ピロリ菌にかかったら確実に病気を引き起こす」というわけではありません。

実際に上の病気になるのは、ピロリ菌に感染しているひとの数%程度といわれています。

そもそも日本人の約半分はピロリ菌に感染しています。

もし自分や身近なひとがピロリ菌に感染していることがわかってもあわてる必要はありません。

もっとも、幼いときの衛生環境によって感染しやすさは大きく変わり日本人の感染率は年々低下しています。

20歳代ではすでに10%未満で、10歳代以下ではさらに低いといわれています。

ピロリ菌が感染しているか調べる検査は?

とはいえ、ピロリ菌に感染しているかどうかがわかるなら知りたいですし、感染しているのならば退治したいですね。

ピロリ菌が感染しているかどうかを確認する方法はいくつかあります。

まず、「アンモニアを検出する」という方法です。

アンモニアは尿素を分解すると発生する物質ですが、ピロリ菌がいなければ通常胃の中には存在しません。

そこで内視鏡で胃の粘膜をとってきて少し時間をおいてアンモニアがあるかどうかを確認するのです。

アンモニアが存在するかどうかは、アンモニアに反応して色が変わる試薬を使えばすぐにわかります。

 

また、「息の中の二酸化炭素を検出する」という方法もあります。

ピロリ菌が尿素を分解するとアンモニアだけなく二酸化炭素も発生します。

そこで尿素と二酸化炭素に共通する「炭素原子 C」に放射性物質で「印」をつけておきます。

「印」がついた尿素をのみこみ、はく息の成分を調べます。

分解された「印つき」の二酸化炭素は全身をまわり、はく息としてからだの外に出されます。

そこで、はく息にふくまれる二酸化炭素に「印」がついていればピロリ菌によって尿素が分解された証拠になり、からだの中にピロリ菌がいる証拠となります。

 

他にも血液検査でピロリ菌に対する抗体を調べる方法もあります。

ピロリ菌を除菌する方法は?

さいごにピロリ菌を退治する方法を紹介します。

ピロリ菌は細菌なので抗生物質(抗菌薬)をつかってやっつけます。

さらに胃酸を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)を併用することで除菌率が上がります。

実際には、抗菌薬であるアモキシシリンとクラリスロマイシンにプロトンポンプ阻害薬を加えた3つの薬で治療する場合が多いです。

除菌成功率は70~90%程度といわれています。

ちなみに除菌できなかった場合は薬をかえて再び除菌を試みます。

まとめ

・ピロリ菌は感染することによりさまざまな疾患の原因になる。

・ピロリ菌は尿素を分解することでアンモニアをつくりだし、胃酸を中和することで胃の中でも生きられる

・ピロリ菌が感染しているかどうかを確認する方法は、

  ①胃粘膜のアンモニアを確認する (迅速ウレアーゼ試験)

  ②はく息の二酸化炭素を調べる (尿素呼気試験)

  ③血液中の抗体を調べる(血中抗体価)

・ピロリ菌の除菌は「抗菌薬+プロトンポンプ阻害薬」で行う。