後輩や部下をのばすしかり方は?

Q、後輩がミスをしたり、ルールを守らなかったときどのようにしかっていいかわかりません。

   何かいい方法はありますか?

 

学年が上がったり、同じ職場で長く働いていると、多くの場合後輩や部下ができます。

そして、仕事やルールを教える中で立場上ほめたり、しからなければならない場面が訪れます。

しかし、ほめたりしかったりすることに苦手を感じるひとも少なくないと思います。

そこで今回は、苦手なひとでも実践できるおすすめの「しかり方」を紹介します。

興味をもっていただいた方は「後輩や部下をのばすほめ方」もご参照ください。

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大前提①:何のためにしかるのか?

具体的な「しかり方」を紹介する前に、忘れてはならない大前提を2つ説明します。

実際にしかるときには必ず頭においてください。

大前提の1つめは「何のためにしかるのか?」です。

 

例えば後輩Aが集合時間に遅れたとします。

先輩Bは「あいつ遅刻しやがって」と頭に血がのぼります。

そして、遅れて後輩Aが登場します。

すると先輩Bは「遅刻だ!ふざけるな!」とどなります。

この件、実は先輩Bは「しかって」いません。

「怒って」いるだけです。「遅刻されたことによる怒りを感情のままぶつけて」いるだけです。

 

もちろんこの件で悪いのは遅刻した後輩Aです。

どなられてこわい思いをしたことによって遅刻はしなくなるかもしれません。

しかし、それは「再びどなられてこわい思いをしないようにする」ための行動です。

「なぜ集合時間に遅れてはいけないのか?」「遅れないようにするためにはどうすればいいか?」というより本質的な問題までたどりつかなくなってしまいます。

 

「しかる」という行為はあくまで「しかる相手」のためのものです。

「してしまったミスや失敗の問題点は何か?」「どうすれば同じミスや失敗をしないようになるか?」などを考え成長するきっかけとなる行動です。

そして、その積み重ねが組織全体の成長にもつながります。

いいかえると、相手にとってプラスになるように考えてしからない場合は、それは単に自分のための行為、自己満足の行為になってしまうということです。

大前提②:ミスや失敗は誰でもする

大前提の2つめは「ミス」は必ず誰でもします。

それは熟練者でも同じことです。

プロのアスリートでも1試合を通して小さなミスもゼロというは非常にまれですし、「弘法にも筆の誤り」ということわざもありますね。

まして経験が浅ければミスが多くなることは当然です。

人はミスや失敗をくりかえすことで成長するのです。

組織においてもミスを減らす努力は大切ですが、ミス0を目指すことは現実的ではありません。

それよりも「ミスは必ず起こるもの」と考え、小さなミスが起こっても他の人が気づけたり協力することにより、ミスが大きな事故につながらないしくみをつくることの方が重要です。

①事実関係を確認する

それでは具体的な「しかり方」を紹介します。

1つめは「事実関係を確認する」です。

遅刻のように事実関係が明らかな場合は別ですが、「他の人から聞いた」など直接見ていないミスや失敗が発覚する場合もあります。

例えば備品が壊れているのを先輩Bが発見して、「備品を壊したのはだれだ!」と聞いたところ、ある後輩が「A君がやりました」と伝えたとします。

すると「遅刻したばかりなのにまたあいつか!Aを呼べ!」と呼び出します。

おびえながら登場した後輩Aに「お前が壊したのか!」と問い詰めます。

 

しかし、冷静に考えると「なぜ後輩Aが壊したとわかったのか?」「なぜ壊した場面を確認したのにみて見ぬふりをしたのか?」「勘ちがいや見間違えの可能性はないか?」などさまざまな疑問点が生じます。

そこでまずすべきことは「事実関係の確認」です。

もちろん後輩Aが話すことが全て真実とも限りません。

しかし、まずは当事者、関係者、第三者それぞれの言い分を聞き、くいちがいがないかを見極める必要があります。

少なくとも事実関係がわかるまでは「ミスや失敗をした」という前提で話すべきではありません。

先ほどの先輩Bは一応事実関係の確認をしているものの、はじめから「後輩Aが壊した」と決めつけてどなっています。

その前に遅刻したことで「後輩Aはミスが多い子」という先入観もあったのかもしれません。

先入観や思いこみこそさらに大きなミスや失敗を招くリスクがあるので、その点からもまずは冷静に事実関係を確認することをおすすめします。

「オオカミが来たぞ」と毎回ウソをついている人でも、ある日本当にオオカミが来て「オオカミが来たぞ」と言いている場合もないとはいえません。

②ミスや失敗を3つの種類にわける

つづいて「ミスを3つの種類に分ける」です。

個人的にはこの段階が最も重要であると考えています。

3つとは

①防ぐことが可能であった、あるいは自分の利益を優先させたことによるミスや失敗

②予測することが不可能、あるいは困難であったミスや失敗

③良かれと思って行動した結果、起こってしまったミスや失敗

の3つです。

 

まずは ①防ぐことが可能であった、あるいは自分の利益を優先させたことによるミスや失敗 です。

例えば遅刻の場合は「朝荷物の準備をしていたら出発が遅れた」「日曜で時刻表が平日とちがった」「そもそも数分遅れることが悪いと思っていなかった」「なるべく長い時間寝たかった」などです。

このような場合は、明らかに本人に落ち度があり、問題点や再発予防策を本人と話し合う必要があります。

特に自分がラクをしようとした結果起こった場合や、ミスや失敗を防ぐ意識がなかったあるいは著しく低かった場合は、今後もミスや失敗をくりかえすリスクが高く、放置すると組織全体の雰囲気も悪くなります。

このような場合は、冷静にしかし厳しく徹底的に改善を試みる必要があります。

 

つづいて ②予測することが不可能、あるいは困難であったミスや失敗 です。

例えば「事故で電車やバスが止まった」「車内で体調が悪くなり休んでいた」ことにより遅刻した場合などです。

このような場合は、「さらに時間に余裕をもって行動する」「体調が悪くても遅れそうになった時点で連絡する」など細かい点での改善点を話し合う必要はありますが、全体としては本人に落ち度はなく、必要以上にしかるべきではありません。

 

さいごに ③良かれと思って行動した結果、起こってしまったミスや失敗 です。

このタイプのミスや失敗の対応には注意が必要です。

例えば、「人数分のスポーツドリンクを買っていこうとコンビニによったら遅れてしまった」などの場合です。

遅刻してしまっているので結果的にはミスであり、「より道をすべきではなかった」ということになります。

しかし、このような場合はしかるべきではないと私は考えます。

なぜなら、「よかれと思ってとった行動」をミスや失敗とされてしかられた場合、「しかられるくらいなら二度とするのをやめよう」となってしまうおそれがあるからです。

私の友人にも、小学生のころ電車で席をゆずろうとしたら感謝されるどころか怒られてしまい、それ以降二度と席をゆずらないと強く心に決めている人がいます。

「誰かのために良かれと思ってとった行動」は必ずしも感謝されたりいい結果にならない場合もありますが、その意図や心配りは長い目でみるとお互いにとって良い方向に向かいます。

もちろん、だからといって遅刻してもいいわけではありませんので「遅刻をしてほしくなかったこと」や「優先順位を考えること」を伝える必要はあるかもしれませんが、それ以上に「みんなのために飲み物を買ってきてくれようとした」気持ちに全力で感謝することをおすすめします。