小説はできごとや登場人物の心情に着目しよう!
小説は問題文を読んでいるだけでもおもしろいので、論説文よりも苦手意識は少ないかもしれません。
しかし、小説こそ注意が必要です。
なぜなら、小説「問題」を解くときと趣味の読書では読み方が全く異なるからです。
趣味で読書するときは全てが自由です。「このとき主人公はこんな気持ちだな」「この人物はあとで裏切るかもしれない」「きっとこれが作者のメッセージだ」などどんな想像をしてもかまいません。
しかし、テスト問題としての小説は別物です。
あくまでテストであり、テストには模範解答が必要です。
そして、模範解答とするためには明確な「根拠」が必要です。
では、「根拠」はどこにあるのでしょうか?
それは「本文中」です。
はっきりと「主人公は悲しい気持ちになった」とは書いていなくても、「悲しいことが推測できる」行動や言動が書かれています。
あるいは風景など周りの描写によって推測できることもあります。
あくまで「自分で想像する」のではなく「本文中の根拠から推測する」ことが重要です。
解答の根拠は本文中にある!
論説文でも小説でも読解問題の解答の根拠は必ず本文中にあります。
なぜでしょうか?
これは問題をつくるひとの立場で考えればすぐにわかります。
仮に来月の全国統一模試の問題をあなたがつくることになったとします。
出題される文章はすでに決まっています。
あなたならどのように問題や解答をつくりますか?
もし自分の想像で「このとき主人公はこのような気持ちだったに違いない」と想像して解答をつくったらどうなるでしょうか?
テストを受けた全国の生徒や全国の国語の先生から、「なぜこれが解答なのか?」「他の選択肢ではだめなのか?」「あなたは文学をわかっていない」などの大量の質問や苦情が殺到するかもしれません。
想像するだけでぞっとしますね。
このような事態をさけるためには「本文にこのように書かれているから、このような問題をつくってこのような解答にしよう」となりますよね。
そうするしかないのです。
それならばもし質問や苦情が来ても、「本文にこう書かれているじゃないですか。だからこれが正解となるのですよ」と反論することができます。
「本文のここにこのように書かれているからこれが解答」のように、必ず「根拠」のある解答をするように心がけてください。
小説問題の例
「解答の根拠は本文中にある」ことがよりわかりやすいように小説問題の一例をあげます。
例題:次の場面でのたかしの気持ちを「あ」~「う」から選んでください。
「最後の試合に負けた後、僕はたかしといつもの丘の上にいた。僕もたかしも何も話さず、沈黙が続いた。おそるおそるたかしの顔を見ると、怒りやくやしさ、悲しみなどが混ざったような複雑な表情をしていたが、まっすぐ前をみていた。眼には涙がうかんでいた。ふいにたかしがいつもと同じように僕にいった。『帰ろう』。いつのまにかさっきまで空一面をおおっていた雲は消えていた。」
あ:自分のせいで試合に負けたことに対する怒りや後悔を感じている。
い:試合に負けて引退を決意したが、僕に悟られないように明るくふるまっている。
う:試合に負けていろいろな思いがあったが、気持ちを切りかえて晴れやかな気持ちになっている。
放課後のカフェで話す感想ならどれでも正解です。
しかし、テストでは正解は「う」のみとなります。
なぜ「う」が正解で、他の回答は不正解なのでしょうか?
正解の基準は「本文中から読みとれるかどうか」の一点です。
1つずつみていきましょう。
「あ:自分のせいで試合に負けたことに対する怒りや後悔を感じている。」
「自分のせいで」とありますが、「たかしのせいで負けた」とは読み取れませんね?
「僕」のせいで負けて怒っているだけかもしれません。
たしかに「怒り」は書いてありますが、複雑と書いてあるので「怒り」だけではなさそうです。少なくとも「後悔」は読み取れませんね。
つづいて「い」です。
「い:試合に負けて引退を決意したが、僕に悟られないように明るくふるまっている。」
「引退を決意」とありますが、これは読み取れませんね。
「僕に悟られないように」とありますが、たしかに「いつもと同じように」とはありますが、「悟られないように」の根拠としては不十分です。
もし仮に原作が「あ」や「い」の通りでも、この問題文からは正解とはならないのです。
したがって「あ」「い」は不正解となります。
一方で無難にもみえる「う」をみてみましょう。
「う:試合に負けていろいろな思いがあったが、切りかえて晴れやかな気持ちになった。」
「試合に負けた」⇒本文に書いてある事実
「いろいろな思い」⇒本文に「複雑な表情」と書いてある
「切りかえて」⇒本文に「いつもとおなじように」とあり、「いつもと同じ状態にもどっている」根拠となる
「晴れやかな気持ち」⇒本文に「空一面をおおっていた雲が消えていた」とあり情景が根拠となる。
このように、「う」には矛盾はなく、根拠もあります。
したがって本問の解答は「う」となるのです。
もちろん実際のテストではここまで選択肢に差をつけると明らかすぎるので、いわゆる〇の中から◎を選ぶ問題や、×の中から△を選ぶような難易度の高い問題もあります。
「『う』が模範解答」といわれるとすっきりしないかもしれませんが、テスト問題として考えるとこのようになります。
まとめ
・小説はできごとや登場人物の心情に着目して読もう!
・解説がついている模範解答は必ず読み、根拠を確認しよう!