国語学習の極意⑥「古典(古文・漢文)、韻文攻略法」

古典の学習は外国語と同じ!

古典(古文、漢文)の勉強法は現代文(論説文、小説)とは分けて考える必要があります。

一見漢字やひらがなで書かれているのでなんとなく読める気がしてしまいます。

しかし、現代と全く異なる意味の古文単語もあります。

例えば古文単語の「いとほし」は、「愛おしい」という意味ではなく「気の毒」という意味となります。

これを知らずに「なるほど、愛おしいひとがいるんだな」と思って読み進めると、意味不明な物語になってしまいます。

また尊敬語も、例えばとても偉いひとには尊敬語に尊敬語を重ねる二重敬語を使うなど、現在とは異なる使い方をします。

漢文も漢字のみで書かれているので、そのままでは読めません。

しかも文の構造が中国語と同じで「主語→動詞→目的語」の順となり、日本語の「主語→目的語→動詞」とは異なります。

ちなみに英語も「主語→動詞→目的語」ですね。

例えば、漢文の「子曰〇〇」は「子いわく〇〇」と読み、現代語訳すると「孔子は〇〇と言った」となります(※子は孔子のこと)。

つまり動詞と目的語の順番を入れ替えて読む必要があります。

そこで登場するの「返り点」です。

返り点で読む順番がわかり、そして送り仮名と合わせることではじめて「日本語のように」読むことができます。

このように、古典はそれぞれの言語や文法のルールを勉強する必要があり、その勉強法 は英語など外国語と変わりありません。ただし、英語と比べると覚えることは少ないので必要以上に構えなくても大丈夫です。

韻文攻略法

韻文とは簡単にいうと詩や短歌、俳句のことです。

詩にも種類がありますが、これらに共通するのは「表現のしばりがある」ということです。

例えば俳句が「五七五」の型であることは知っていますね。

「古池や 蛙飛び込む 水の音」という松尾芭蕉の有名な俳句があります。

意味は「古い池にカエルが飛び込む音が聞こえるよ」です。

そう説明してしまえば終わりなのですが、あえて「五七五」という制限された文字数にことばや意味をつめこむことで、心地の良いリズムが生まれ、説明されていない部分を自由に想像することができます。

この芭蕉の句でも、「池にカエルが飛び込む音が聞こえるほど静かな情景」が目に浮かびます。

文字数の制約など不自由さがある中で伝えたいことを工夫して伝えるおもしろさが韻文にはあるのです。

詩にも独特の表現法があります。「表現技法」といいます。

例えば「倒置法」はその名の通り順番をひっくり返す技法です。

「学校へ 行く」に倒置法を使うと「行く 学校へ」となります。

例えば部活の大会へ出発するときに「さあ決戦の地へ行こう!」と言うよりも「さあ行こう!決戦の地へ!」と言った方が、意味は変わりませんが「決戦の地」が強調されてより雰囲気が出ますよね。

このような表現法が詩にはたくさんあります。

スポーツごとにルールが異なるように、韻文にもそれぞれに異なるルールがあります。

それぞれのルールをおさえてしまうと、一気に理解しやすくなり、またおもしろくなってきます。

まずはそれぞれのルールを知ることが韻文の勉強の入口です。

掛詞(かけことば)と押韻(おういん)

少し雑談となりますが、知ると楽しい技法を2つ紹介します。

掛詞(かけことば)と押韻(おういん)です。

まず、掛詞は和歌の技法です。

百人一首の1つに「大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみもみず 天の橋立」という短歌があります。

現代語訳は「大江山を超え、生野を通る丹後への道は遠すぎて、まだ天橋立の地を踏んだこともありませんし、母からの手紙も見てはいません」です。

これだけの内容を「五七五七七」の中に詰め込むためにある工夫がされています。

例えば「いく野」には地名である「生野」と「行く野(行く道)」の2つの意味がかかっており、「ふみもみず」は「文(手紙)を見ていない」と「(地を)踏んでいない」という2つの意味がかかっています。

1つの言葉に2つの意味をもたせる技法が掛詞です。

漢文の詩である漢詩には「押韻」という技法があります。

漢詩の一番上の段や一番下の段の漢字を拾っていくとある共通点がみられることがあります。

例えば「間」「単」「山」という3つの漢字の共通点は何でしょうか?

3つの漢字を音読みすると「かん」「たん」「さん」です。

ローマ字読みすると「kan」「tan」「san」です。

3つとも母音が「an」で共通ですね。これが押韻です。

「韻をふむ」ともいいます。

現代でもラップなどで「ライミング」という技法として使われています。

例えば「数学の試験(shiken)が2点(niten)で危険(kiken)。地球の自転(jiten)が止まるほどの事件(jiken)」というラップでは全て母音が同じで韻を踏んでいますね。

私のような素人がつくるとこのようなクオリティになってしまいますが、プロのラップは本当にすごいです。

1つの単語で10個以上韻を踏んだり、四字熟語や長文全体で韻を踏んだりと、クオリティの高さに驚き感動します。

ぜひ機会があれば聞いてみてください。

韻を踏んでいると音のリズムが良く印象に残りやすいので、ラップ以外の音楽の歌詞や広告のキャッチコピーでも広く使われています。

まとめ

・古文、漢文は外国語を学ぶつもりで勉強しよう!

・韻文は厳しいルールを楽しもう!

・古典の技法は現代のラップでも使われている!