効果的なルールの決め方とは?

ルールづくりの大原則

まず、ルールをつくるときの大原則を紹介します。

スマホ使用のルールに限らず、「ルールを決めて、守る」という経験は成長の過程で重要なものです。

ルールと聞くと、子どもにとっては校則や門限のように「行動や自由を制限する」イメージが強いかもしれません。

もちろんそれも事実ではありますが、もう1つ重要な側面があります。

それは、「明確なルールが存在することにより自由や権利が保障されたり、安心して行動できる」ということです。

例えば、「授業中は私語をしてはならない」というルールがあることによって「他の人の私語に邪魔されずに集中して授業を受けられる」権利を得ることができ、「授業中以外であれば私語をしても良い」自由を得ることができます。

あるいは、「未成年はお酒を飲んではならない」という法律で明言されているから、20歳になったら安心してお酒を飲むことができます。

もし、「若い人がお酒を飲んだら処罰する」のような曖昧な法律であったとすると、何歳になっても安心してお酒を飲むことができません。

社会にはさまざまなルールが存在しており、それらをみんなが理解し守ることで社会は円滑に回っています。

ルールとはいいかえると「お約束」のことです。

ルールには法律や条例のような多くの人に適用される厳格なものから、校則や施設の規則、家庭内のルールのようなローカルなものまでさまざまなものがあります。

また、「マナー」や「道徳」のように明文化はされていないけれども、多くの人が共有しているものもあります。

さらに、人間はそれぞれ「自分ルール」をもっています。

「判断に迷ったときはこのように決めよう」「このような場合はこのように行動しよう」といったような具合です。

そして、「みんなのルール」に反しない範囲で「自分ルール」に基づいて行動することで、いわゆる「理性的」な行動が可能になるのです。

①子ども自身にルールを決めてもらう

ルールを決める上で最も重要なことは「子ども自身にルールを決めてもらう」ことです。

「目的に応じて自分でルールを決め、そのルールを自分で守る」ことで生活習慣の改善に子ども自身が主体的に取り組むことができます。

自分で決めたルールの方が守ってくれる可能性が高くなるだけでなく、「自分でルールを決めて守る」という経験によって、自己コントロール力を鍛える効果も期待できます。

「自分の物語の主人公」になるために必要な「自分の力で考え、決め、行動する」トレーニングになるのです。

もちろんはじめから、完璧にルール設定するのは難しいですし、完全に本人まかせではゆるいルール設定となり、十分な効果を期待できない可能性があります。

そこで本人の年齢にもよりますが、ある程度の方向性を示してあげる必要があります。

すなわちルールの「大枠」を決めるのです。

②汎用性の高いルールを伝え、子どもに具体化してもらう

ルールの大枠を決め、それに対して子どもに具体的なルールを決めてもらうのです。

例えば「毎日決まった時間に就寝する」というルールを子どもに提示し、子どもに「毎日午後11時にベッドに入る」といったように具体化してもらうのです。

理想的にはなるべく抽象的で汎用性の高いルールを親が提示し、それをもとに具体化してもらうことが望ましいです。

細かく具体的なルールを設定しようとすると、「電車の中では大きな声を出さない」「電車の中では走らない」「電車の中では音を出してゲームをしない」のようにたくさんのルールが必要となります。

しかし、これらは「電車の中では、他の人の迷惑になる行為をしない」とまとめることができます。

さらに、バスや他の公共施設でもこのルールができるため「公共の場所では他の人の迷惑になる行動をしない」とより抽象的で汎用性の高いルールになります。

この抽象的なルールを具体化して、さまざまなルールを自分で考えて決めてもらうのです。

どの程度抽象的なルールから具体化できるかは、子どもの年齢や発達段階によっても異なるので、より抽象的なルールから提示して、難しければだんだんと具体化しながらヒントを出す方法がおすすめです。

「具体化」したり、反対に「抽象化」するトレーニングは論理的思考力や発想力を鍛える効果もあります。

究極的には「他の人の迷惑になることはしない」「自分がされていやなことはしない」などの非常に抽象的なルールを自分で具体化し、さらにできたルールを合わせて抽象化することをくりかえすことができるのが理想的です。

③ルールの根拠と意図を明確にする

子どもに限らず、根拠や意図が明確でないルールは継続することは困難です。

例えば、始業が8時30分で片道30分かかる学校へ向かうとして毎日朝8時ちょうどに家を出ている子がいるとします。

幸い今のところ遅刻はありませんが、いつ遅刻してもおかしくないのでできればもう少し余裕をもって出発してほしいと考えています。

しかし、いきなり「明日から7時45分に家を出なさい」とルールを設定しても、現状遅刻もしていないのに朝の貴重な時間を15分削られることにすぐに納得できるはずがありません。

新しいルールを採用するためには「納得のできる理由」が必要です。

例えば、「15分早く出発すれば、バスが遅延しても十分間に合う」「15分早く出発すれば、出発してすぐなら忘れ物に気付いても取りに帰ることができる」「時間がぎりぎりであせると事故に遭うリスクが高くなる」などです。

理にかなっており、また継続できそうなルールであれば、子ども自身が採用を決めてくれる可能性が高くなります。

④共有できるルールもつくり、大人も厳守する

もう1つ重要なことは、子どもだけでなく「家族でも共有するルール」を決めてもらい、大人もそれを厳守することです。

ルールとはいいかえると「お約束」です。

家庭のルールとは「家族同士のお約束」であり、校則は「学校の中でのお約束」であり、法律は「社会におけるお約束」です。

さらに、「自分ルール」は「自分自身とのお約束」です。

成長に伴い「自我」が芽生えると、「自分ルール」がたくさんでき、その「ルール通りに行動したい」という欲求が生まれます。

例えば、「シャツより先にズボンをはく」「今日は赤いコップで牛乳を飲む」などです。

しかし、さらに成長すると常に「自分ルール」の通りに行動できるわけではないことを学習します。

公園に着いたらブランコで遊ぶと決めていても、先に遊んでいる子がいれば順番を待つ必要があります。

夜おかしを食べたいと思っても、歯みがきの後におかしを食べることを認めもらえることはありません。

おゆうぎ会でお姫様の役になりたくても、配役が1人しかいなければどちらかががまんしなければなりません。

このようなとき、「自分ルール」と「自分以外とのルール」とうまく擦り合わせる必要があります。

成長する過程で、「自分ルール」と「自分以外とのルール」が必ずしも両立できないことを学び、その一方で「自分以外とのルール」の範囲の中で「自分ルール」をうまく両立させられることも学びます。

「自分ルール」を「社会のルール」にうまく適合させる能力は人間社会で生きていくためには必要となります。

「ルールを共有して守る」ことは、その過程として重要です。

一方的なお約束は「ルール」ではなく「命令」です。

ルールはお互いが守ることではじめて成立します。

例えば「食事中はテレビを見ない」というルールを守っていたのに、大人だけテレビをつけて食事をしていたら、当然不満と不信感が生まれます。

今後、留守番中など親の目がなくなったときにテレビを見ながら食事をするようになるかもしれません。

そこで、「ルール」を決めるときには、可能な限り家族に共通するルールを設定し、お互いに厳守することをおすすめします。

もちろん、家族であってもそれぞれライフスタイルは異なりますので、全てのルールを共有することはできません。

例えば、「夜10時以降はスマホを電源をオフにする」というルールや「食事中はスマホを手にしない」というルールがあったとしても、仕事などの緊急連絡が入る可能性があったりとやむを得ず使用する場合があるかもしれません。

しかし、このような場合でも「緊急で仕事の電話に出る必要があるから、そのときだけは食事中にスマホを使ってもいい?」「明日の行事のことで急いで調べなければならないことがあるから、10時を過ぎててもスマホを使ってもいい?」のように、例外をつくる場合にはあらかじめ伝えたり、許可をもらうことで、不満や不信感を軽減することができます。

また、「条件」や「同意」によって例外の対応が可能となることがわかれば、隠れてルールを破るリスクも下がります。

実際世の中の大半のルールには「例外」や「暗黙の了解」であふれており、またそれがあるからこそうまく社会がまわっている面もあります