突然変異の原因とは?

問題

次のうち、突然変異が起こってもアミノ酸の配列に変化を起こさない場合があるものはどれでしょうか?

①置換 ②挿入 ③欠失

解説

「突然変異」ということばを聞いたことがあると思いますが、一体どのような現象なのでしょうか?

まず、「変異」とは「同種の個体間にみられる形質のちがい」のことです。

つまり人によって顔がちがったり、身長がちがったり、声がちがうことなどは全て「変異」です。

そして、「突然変異」とは、「遺伝情報をもつDNAの塩基配列が変化する」こと「それによって形質が変化する」ことを意味します。

かんたんにいうと、「変異」が遺伝情報にしたがった「予定通りの現象」であるのに対して、「突然変異」は遺伝情報の変化に伴う「予定外の現象」ということです。

 

突然変異の原因となる「塩基配列の変化」にはいくつかの種類が確認されています。

例えば「置換」「挿入」「欠失」などです。

DNAの遺伝情報は4種類の塩基(A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン))の配列の形で保存されています。

この塩基配列に相補的な塩基(U(ウラシル)、A(アデニン)、C(シトシン)、G(グアニン))が結合することで、遺伝情報が写し取られm-RNAがつくられます。

さらにm-RNAの情報をもとに、アミノ酸と結合したt-RNAが結合することでタンパク質が合成され結果として「変異」が起こります。

つまり、m-RNAの塩基配列は、結合するt-RNAの塩基およびそれにくっついている「アミノ酸の種類」を決定する「暗号」となっています。

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例えば、m-RNAの塩基配列が

UAUCGCCUA

であったとします。

m-RNAの塩基配列は3個セットになっており、この塩基3個セットを「コドン」といいます。

つまり上の塩基配列は

[UAU][CGC][CUA]

という3つの「コドン」で構成されています。

そして[UAU]はチロシンというアミノ酸、[CGC]はアルギニンというアミノ酸、[CUA]はロイシンというアミノ酸の暗号となっています。

したがってこの塩基配列からは

「チロシン」-「アルギニン」ー「ロイシン」というタンパク質が合成されるのです。

 

さて、このことをふまえて突然変異の原因をみていきましょう。

まずは「置換」です。

「置換」は「塩基の1つが別の塩基に置き換わる突然変異」です。

例えば、

UAUCGCCUA の2番目の塩基が「A」→「C」に置き換わり

UCUCGCCUA

となったとします。

すると本来「UAU⇒チロシン」であったはずが、「UCU⇒セリン」となるため、

本来の「チロシン」-「アルギニン」ー「ロイシン」ではなく、「セリン」-「アルギニン」ー「ロイシン」というタンパク質が合成されます。

ただし、残りの「アルギニン」「ロイシン」には影響がでないため、突然変異による影響は限定的です。

それどころか、コドンは4×4×4=64通りの暗号で20種類のアミノ酸を指定しているため、異なる塩基配列でも同じアミノ酸を指定する場合があります。

つまり、「置換が起こってもアミノ酸が変化しない」場合すらあるのです。

以上から正解は「置換」となります。

ただし、「置換」が起こることにより、翻訳が終了する「終止コドン」の塩基配列になってしまった場合、一発レッドカードでその後の翻訳が行われなくなるため、この場合は例外的に「置換」でもアミノ酸配列に大きな影響を与えてしまいます。

 

つづいて残りの2つの突然変異をまとめて説明します。

「挿入」は「もともとの塩基配列に別の塩基がわりこむ突然変異」で、「欠失」は「もともとの塩基配列から塩基がぬけおちる突然変異」です。

これらの突然変異はたとえ1か所の突然変異でも基本的にアミノ酸配列に大きな影響を与えます。

なぜならば、「コドンの3個セットがずれてしまう」からです。

 

例えば

UAUCGCCUA の2番目と3番目の塩基の間で「C」の「挿入」が起こり

UACUCGCCUA

となったとします。

すると「コドン」は塩基3個セットなので、

[UAU][CGC][CUA]となるはずが

[UAC][UCG][CCU]A

となり、突然変異が起こった先のアミノ酸が配列が全て変化してしまうのです。

この現象を「フレームシフト」といいます。

「欠失」でも同じように「フレームシフト」が起こります。

 

ちなみにアフリカで多い「鎌状赤血球貧血症」や、メラニン色素が合成できない「アルビノ」も突然変異が原因で起こります。

「鎌状赤血球貧血症」はアミノ酸が1つ「グルタミン酸」から「バリン」に変化しただけで生じます。

遺伝子の変化が与える影響の大きさがわかりますね。

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解答

①置換