PCR法のしくみは?

問題「PCR法のしくみ」

PCR法の手順について、次の①~③を正しい順番に並びかえてください。

A 温度を下げて1本鎖DNAにプライマーを付着させる

B 高温にして、2本鎖DNAを1本鎖にする

C DNAポリメラーゼを利用してDNAの複製を行う

解説

「PCR法」「特定のDNAを人工的に大量に複製する手法」のことです。

新型コロナウィルスのニュースでも日々話題になっていますね。

主にウィルスを検出する「感染症の診断法」として話題になっていますが、バイオテクノロジーの分野を中心に幅広く活用されている方法です。

例えば、ウィルスの診断の他にも法医学分野でのDNA鑑定や、遺伝子組み換え食品の検査臓器移植のときに臓器がからだと合っているかを調べる「適合検査」などに利用されます。

今回はこのPCR法のしくみをかんたんに解説します。

 

通常細胞の中でDNAの複製が行われるとき、まず本来二重らせん構造をとっている2本鎖のDNAがほどけて1本鎖となります。

そして、1本鎖になったDNAに相補的な塩基が結合していくこと新たなDNA鎖がつくられる「半保存的複製」が行われます。

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かんたんにいうとこれと同じ現象を人工的に起こすのがPCR法です。

 

①高温にして、2本鎖DNAを1本鎖にする

まずは、対象となるDNAを2本鎖から1本鎖にする必要があります。

その方法が「高温にする」ことです。

DNAの2本の鎖は塩基同士が「水素結合」でゆるくつながっており、95℃程度の高温にすることで水素結合が切れて2つに分かれるのです。

少し荒っぽいですが、この方法で1本鎖のDNAが2本できます。

 

②温度を下げて1本鎖DNAにプライマーを付着させる

DNAが一本鎖になったら、50~60℃に冷やします

そして、「プライマー」とよばれる短い塩基配列をDNAに付着させます。

「プライマー」はDNA合成を開始する「合図」かつ「目印」のような存在であり、プライマーの部分からDNA合成が始まります。

 

③DNAポリメラーゼを利用してDNAの複製を行う

「プライマー」が付着すると、その部分からDNAポリメラーゼのはたらきでDNAが合成されていきます。

この工程はやや高めの72℃程度で行われます。

 

あとは①~③をくりかえすことでDNAの増幅がくりかえされます。

この方法によって3時間程度で特定のDNAを数百億倍に増やすことができるのです。

以上から解答はB→A→Cとなります。

解答

B→A→C