転写と翻訳のくわしいしくみは?

問題

タンパク質合成における「転写」と「翻訳」のしくみについて、次の過程を順番通りに並びかえてください。

A アミノ酸同士がペプチド結合する

B スプライジングが起こりm-RNAがつくられる

C DNAの塩基配列と相補的な塩基をもつヌクレオチドが結合する

D リボソームがm-RNAに結合する

E DNAの2本鎖がほどける

F リボソームが移動していき、終止コドンに到達したら翻訳が終了する

G ヌクレオチド同士が結合する

H t-RNAのアンチコドンが、対応するm-RNAのコドンに結合する

I タンパク質の立体構造がつくられる

J m-RNAが核内から細胞質へ移動する

解説

タンパク質は細胞の「核」に存在するDNAの遺伝情報をもとに、「転写」「翻訳」が行われることによって合成されます。

今回はタンパク質合成の全体像をまとめて説明します。

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①DNAの2本鎖がほどける

DNAは通常、2本鎖による「二重らせん構造」をとっています。

しかし、タンパク質を合成するためには「タンパク質の設計図」であるDNAのコピーをとらなくてはなりません。

DNAの2本鎖は、向かい合い対になっている塩基が結合することで構成されていますが、塩基配列を読み取るためには塩基がむき出しになっている必要があります。

そこで、タンパク質合成のときには1度塩基同士の結合が切れてDNAの2本鎖がほどけるのです。

それにより、「設計図のコピー」を行う「転写」が可能となります。

本をコピーするときも、本を開く必要がありますね。

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②DNAの塩基配列と相補的な塩基をもつヌクレオチドが結合する

2本鎖がほどけて1本鎖となったDNAでは塩基配列がむき出しになっています。

この塩基配列に対して「相補的」な塩基が結合します。

DNAやRNAは「ヌクレオチド」という最小単位で構成されており、「ヌクレオチド」は4種類ある塩基のうち1つずつをもっています。

塩基は「A(アデニン)とU(ウラシル)[※DNAの場合はA(アデニン)とT(チミン)]」、「G(グアニン)とC(シトシン)」が対になっており、この関係性を「相補的」といいます。

磁石のS極とN極のような関係です。

むき出しになったDNAの塩基に対して、相補的な塩基が結合することでDNAの遺伝情報がコピーされていきます

 

③ヌクレオチド同士が結合する

1本鎖になったDNAの塩基に相補的な塩基をもつヌクレオチドが結合したら、今度はヌクレオチド同士が結合します。

ヌクレオチド同士が結合すると、1本の鎖状になります。

「転写」の過程はここまでですが、m-RNAの完成まではあと一歩です。

実は「転写」によって作られたDNAのコピーの1本鎖は、まだm-RNAの完成品ではないのです。

 

④スプライジングが起こりm-RNAがつくられる

DNAの塩基配列には「アミノ酸配列を決める領域」と「アミノ酸配列に関与しない領域」が入り混じって存在しています。

「アミノ酸配列を決める領域」を「エキソン」、「アミノ酸配列に関与しない領域」を「イントロン」といいます。

m-RNAはタンパク質の設計図のコピーなので、タンパク質の材料となるアミノ酸配列に関与しない部分は必要ありません。

そこで、いったんコピーした塩基配列から「アミノ酸配列に関与しない領域」すなわち「イントロン」をそぎ落とすのです。

この過程を「スプライジング」とよびます。

「曲の部分だけを聴きたい人が、録画した歌番組を編集してトーク部分などを削除して曲だけをつなぎ合わせる」ようなイメージです。

スプライジングが完了すると、「m-RNA(メッセンジャーRNA, 伝令RNA)」の完成です。

 

⑤m-RNAが核内から細胞質へ移動する

「転写」まではDNAが保存されている「核」の中で行われますが、続く「翻訳」は「核」の外、すなわち「細胞質」で行われます。

m-RNAが完成したら、核内から核外の細胞質へ移動します。