効果的なごほうびのあげ方は?

Q、お手伝いをしてくれたときなどにごほうびをあげない方がいいって本当ですか?

  効果的なごほうびのあげ方はありますか?

 

子どもにごほうびはあげないほうがいい?

子どもが1つのことに熱中して取り組んだり、何かを達成したり、お手伝いをしてくれたときは成長を実感してうれしくなる瞬間の1つです。

そしてそのようなとき、ついついごほうびをあげたくなります。

しかし、子どもにごほうびをあげると努力やお手伝いをしなくなってしまう可能性があるのです。

 

ある研究では、学生を2グループに分け、一方のグループはパズルを1つ解けるごとにごほうびをあげ、もう一方のグループは何もあげませんでした。

すると、ごほうびをもらったグループはごほうびをあげなくなるとパズルを解くのをやめてしまったのに対し、ごほうびをもらわなかったグループはパズル自体が楽しくなりパズルを解き続ける学生が多かったという結果になりました。

別の研究でも、ごほうびをもらわなくなったらお手伝いや努力をやめてしまったという結果が出ています。

なぜこのようなことが起こってしまうのでしょうか?

これには「内的報酬」「外的報酬」とよばれるものが関係しています。

内的報酬と外的報酬とは?

子どもに限らず、ヒトは何かを達成したり、感謝されたりすることで「うれしい!」「してよかった!」「また次もしよう!」と感じる性質があります。

これが内的報酬です。

一方で、ごほうびのように努力や行為の対価を外的報酬といいます。

そして内的報酬は外的報酬によって簡単におきかわってしまうのです。

 

例えば、ある子どもが「留守の間にそうじをしておいたらお母さん助かるかな?喜ぶかな?」と考えて掃除機をかけている場面を想像してください。

そしてお母さんが帰ってきて「ありがとう。じゃあこれごほうび。」といって100円玉をくれました。

もちろん100円はもらえた方がうれしいですが、「うれしいけど、100円がほしいからそうじしたわけじゃないのに。。。」と思うかもしれませんね。

そして、そのようなことをくりかえしているうちに「そうじしたらまた100円もらえるかな?」「100円もらいたいからそうじしよう」のように「おてつだいの目的」が変わってしまうのです。

あるいは、あるときそうじをしても100円がもらえなかったら「なんでそうじしたのにくれないんだろう?」「もうそうじするのやめよう」となってしまう可能性もあります。

つまり、せっかく子どもが努力やお手伝いによって内的報酬を得ても、ごほうびをあげることにより外的報酬に変わってしまい、ごほうび以外のモチベーションが無くなってしまうのです。

 

そこで、ごほうびをあげるのではなく、努力に対してほめてあげたり、達成したことに対していっしょに喜んだり、「自分もうれしい」ことや「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えることがおすすめです。

お手伝いにしても勉強にしてもスポーツにしても、「感謝された喜び」や「新しいことを知った喜び」や「できなかったことができるようになった喜び」など、「ごほうび」は「形のないモノ」がおすすめです。

すると、「またお手伝いしたい」「もっと他のことも知りたい」「もっとうまくなりたい」など次の行動へのモチベーションも高まり、良い循環が生まれます。

効果的なごほうびのあげ方

ただし、「ごほうびをあげる」ことが常に間違っているというわけではありません。

「ごほうびをあげる」ことが効果的である場合も当然あります。

 

例えば、「はじめはごほうびのためにピアノを練習していたけれども、うまくなってきたらピアノ自体が楽しくなってごほうびなしでも練習したくなった」のような場合です。

新しいことをはじめたときは成功することより失敗することが多く、おとなでも心が折れそうになります。

そこで初期だけうまくごほうびを使ってモチベーションを保ち、楽しくなってからごほうびを中止するのです。

つまり「外的報酬からはじめて、じょしょに内的報酬にきりかえる」ということです。

ただし、初期のごほうびが大きすぎると、ごほうびが目的になってしまい内的報酬にきりかわりにくくなってしまいます。

年齢にもよりますが「『それ自体が目的にならない程度のごほうび』を『自分で』設定する」ことが理想です。

 

また、「自分以外にもいいことがあるごほうび」はむしろおすすめです。

例えば、「ありがとう、〇〇ちゃんがお手伝いしてくれてうれしかったしすごく助かった。おかげで時間に余裕ができたから、いっしょにおいしいおやつを食べにいこうね」のような声かけです。

「自分がお手伝いしたことによって、感謝されただけでなく、自分もお母さんもおいしいおやつが食べられる」という自分にも相手にもいいことがあるという状況になったことは理想的なモチベーションの1つです。

これは子どもだけでなくおとなにとっても非常に重要で、仕事やボランティアなどのモチベーションの維持にも効果的です。

 

また、予防注射など「どうがんばっても楽しくないもの」や「がまんしてでもしなければならないこと」をがんばったときにごほうびをあげることは効果的です。

どのように考え方を変えてもイヤなものは必ずありますので、このような場合はごほうびによってわずかですが前向きになることができます。

 

以上、今回は「ごほうび」について紹介しました。

まとめ

ごほうびをあげると、逆に努力やお手伝いをしなくなってしまう可能性がある。

・ごほうびは「形のないもの」がおすすめ。

・ごほうびをあげるときには方法に注意が必要。

 「効果的なごほうびのあげ方」

 ①新しいことをはじめた初期だけごほうびをあげる

 ②子ども自身以外にも利益があるごほうびをあげる

 ③子どもが、大きすぎないごほうびを自分で決める

 ④注射などどうがんばってもイヤなことをがんばるときにごほうびをあげる