子どものスマホの使い過ぎが気になったときの声かけは?

子どものスマホ使用が気になったときの対応

子どものスマホの使用時間が長くなっている場合、スマホとの距離感が気になる場合、スマホ依存が疑われる場合はどのような対応が必要なのでしょうか?

はじめに強調しておきたいのは、「すでに依存が疑われる場合は速やかな対応が必要」ということです。

一度「依存」状態に陥ってしまうと、子どもが自分自身に力だけで「依存」から抜け出すことは非常に困難です。

様子をみている間にどんどん進行していき、さらに対応が困難になる可能性が高いです。

そこで、なるべく早い段階で介入できるように行動する必要があるのです。

今回、その対応法について紹介します。

⓪子どもと話す

最も基本的であり、最も重要なことですが、同時に最もハードルが高いのもこの「子どもと話す」ことです。

思春期に代表されるように、成長するにつれて子どもは自分の世界をもつようになり親から干渉を受けることを嫌がるようになります。

もちろん自立した1人の大人になるための大切なステップの1つでもありますが。

特にスマホやゲームやテレビ、コミックなど自分が楽しんでいることについて、親からあらたまって話をされるときなどはイヤな予感しかありません。

経験がある方も少なくないと思います。

さらにすでに依存に陥っている場合は通常の会話自体が難しくなっていることもあります。

なぜなら「スマホ依存」に陥っていると、スマホに関する話題についてはより敏感になっているからです。

生きるために必須である、からだの一部のようなスマホを取り上げられたり、制限されることは依存状態の子どもからすると「命の危険」に匹敵することであり、そのリスクに対する警戒心が強くなったり、回避行動をとることは不思議なことではありません。

「ちょっとスマホのことで話があるのだけど」なんて声をかけられた日には、天敵をみつけたときの草食動物並に警戒心マックスとなります。

スマホを悪者扱いしたり、引き離そうとしようものなら、「敵認定」されてしまい、その後の会話自体が困難になってしまうかもしれません。

実際、依存の特徴として、「依存ではなく自分の意思でしているから大丈夫」と依存であることを否定したり、「この程度なら大丈夫」と「依存」を過小評価する傾向があります。

さらに、依存に陥っていると、感情のコントロールができず、怒りっぽく攻撃的になっていたりコミュニケーション能力が低下するため冷静な会話がより困難となります

もし、依存が強く疑われ、子どもとの会話も困難な状態となっている場合は、早急に専門的な診察や治療が必要であるため、なるべく早く医療機関へ相談することをおすすめします。

もちろん、子どもと話ができる状況であっても、「声のかけ方」は非常に重要です。

スマホとの付き合い方を見直してほしいのは本音ではありますが、子どもを問い詰めたり、非難したり、一方的に禁止する話しかけ方では、子どもが警戒するだけで生産的な話はできません。

あくまで「スマホとの付き合い方と向き合い、改善する」のは子ども自身であり、親はその助けとなるというのが大原則です。

もちろん、子どもが自立するまでは親は「保護者」という立場であり、さまざまな危険から子どもを護る役割や責任があります。

状況に応じて行動を制限したり禁止することも必要である場合もあります。

しかし、その一方で「1人の自立した人間になるためのトレーニング期間」でもあり、可能な限り対等な立場で向き合い、話すことも同じくらい重要です。

そこで子どもが自分の思いや意思を話しやすいような声かけを行う必要があります。

① 話しかける

それではスマホとの付き合い方について子どもと話し合うための具体的な方法を紹介します。

まずはもちろん「話しかける」ことですが、話しかけるときにも注意が必要です。

前述の通り、子どもを問い詰めたり、一方的に禁止するスタンスは強くおすすめしません。

例えば、「ちょっとスマホについて聞きたいんだけど」のような声かけは、子どもの警戒感を高めるためおすすめしません。

かわりに、「〇〇ちゃんと話したいことがあるんだけどいい?」「いま話しても大丈夫?」などのように対等な立場で許可を求めることがおすすめです。

拒否された場合も、「大切なことだからどうしても話したいのだけど、いつなら大丈夫?」などのように粘り強く話しかけることで、子どもの同意の上で話を聞くことが望ましいです。

また、興奮したり、熱中しているときには「闘争か逃走か」の状態になっており冷静に考えたり、話したりするのは難しく、熱中を中断されることでより冷静さを失う可能性が高いので、そのようなタイミングは避けることもおすすめです。

声かけの例)
「〇〇ちゃんと話したいことがあるんだけどいい?」
「いま話しても大丈夫?」

② スマホについて話すことを伝える

落ちついて話ができる状況であれば、スマホについて話したい旨を伝えます。

前述の通り、スマホ依存の状態にある子や依存傾向のある子はスマホの話題になること自体を避ける傾向にあります。

依存傾向になかったとしても、深刻な表情で「スマホの使用状況について聞きたい」のように言われたら、「この話題は避けて、この場から逃げ出した方が良さそうだ」と感じるのは自然な感覚です。

これまでのおだやかな雰囲気も一変してしまうかもしれません。

とはいえ、スマホの話題をしないわけにはいきません。

重要なのは、おそらく「ことば」そのものよりも、「緊張感を与えない雰囲気」です。

「事情聴取」のような印象を与えないように、ここまでと同じ表情や声のトーンでひきつづき話します。

「なんか最近おもしろいことあった?」や「いま学校で何がはやってることある?」のような日常会話と同じようなトーンで話し、安心して自分のことを話すことができるようにすることをおすすめします。

声かけの例)

「スマホについて少し話をしてもいい?」

③自分の気持ちを伝える

子どもに話を聞く前に気持ちを伝えることで、「自分が絶対的な味方であること再確認してもらう」ことで警戒心が下がり、安心して話してくれやすくなります。

もちろん、すでに「絶対的な味方である」が共通認識である関係性が形成されている場合は、よりハードルは下がります。

反対に、これまで一貫性がないルールや親の気分によってしかられたり、本当に助けてほしい場面で助けてくれなかったり、味方になってほしい場面で親の世間体や都合を優先されたり、恥や罪悪感をあおることで精神や行動をコントロールしようとされた経験のある子は、どのようなことばを使って簡単には「絶対的な味方」とは思ってくれません。

信頼していない人から「私を信じてください」と言われたり、初対面の人から「私はあやしい者ではありません」といわれるのと同じです。

とはいえ、子どもにとって「絶対的な味方」となれる可能性が高いのはやはり親ですので、粘り強くアプローチを続ける必要があります。

どのような気持ちを伝えるかについては、駆け引きなどをせず自分の正直な気持ちを伝えれることをおすすめします。

おそらくほとんどの方が最も心配なのは「健康に良くない影響を与えること」であり、次に「学校生活や人間関係、学力などに良くない影響を与えること」であると思いますので、

例えば「〇〇くんのからだが心配」「〇〇ちゃんがいまと同じ生活ができなくならないか心配」「お母さんやお父さんに何かできることがあれば協力したい」などの声かけがおすすめです。

もちろん、正直な気持ちであってもはじめから問い詰めたり、非難することばと受け取られないように注意する必要はあります。

例えば、「くわしいスマホの使用状況を知っておきたい」「スマホの使いすぎで成績が悪いから改善したい」のように伝えると、やはり警戒や拒絶されていまうかもしれません。

あくまで、「子ども自身のために話をしたい」というスタンスを保つことが重要です。

声かけの例)

「〇〇くんのからだを心配している」

「〇〇ちゃんがいまと同じ生活ができなくならないか心配している」

「お母さんやお父さんに何かできることがあれば協力したい」

④生活習慣とスマホの使用状況を聞く

スマホについて話し合うことを受け入れてもらえれば、まずは子どもの生活習慣と使用状況を確認します。

具体的には、「何時に起きて、何時に起きているか?」「どのようなときにスマホを使用するか?」「1日合計何時間くらいスマホを使っているか?」などです。

いっしょに生活していても寝室が別であれば、正確な寝る時間まで把握できていないことも珍しくありません。

特に寝室にスマホを持ち込んでいる場合は、驚くような時間までスマホを使用していることもあります。

ただし、ここでも注意が必要なことがあります。

1つめが、「ありのままを書くことができるような雰囲気を保つ」ことです。

例えば、深夜3時までスマホを使っているとして、それを正直に伝えると、ひどく叱られ、スマホの使用を制限されたり、さらには没収される展開は子どもにも容易に想像ができます。

すると、当然自分に都合の悪い情報は出さず、「寝室に入ってからはメールのチェックだけして12時には寝ている」などのように事実と異なる内容を話す可能性があり、これに基づいて改善策を考えても何の効果もありません。

そこで、いますぐ怒りたい気持ちやもっとくわしく聞きたい気持ちをぐっと抑えて、あくまで「生活をより良いものにするための1つのステップ」であり、「怒ったり、罰を与えたり、スマホを取り上げる目的で行うものではない」と冷静に伝え、その約束は必ず守る必要があります。

もう1点が、「子どものプライバシーに配慮する」ことです。

例えば「毎日2時間メールをしている」と言われると、「誰とメールしているの?」「2時間も何を話すの?」「学校で話すのじゃだめなの?」と聞きたくなるのは当然です。

しかし、矢継ぎ早に質問をされると尋問を受けている気持ちになり、それ以上話をしたくなくなります。

また、子どもにも自分の世界があり、プライバシーがあります。

生活習慣を見直す上で「メールをしている」ということを伝えるのは許容できても、「誰を何を話しているか」までは知られたくない場合もあります。

実際、生活習慣を見直す上で、「友達とメールしているか恋人とメールしているか」「好きなタレントの話をしているか真剣な相談をしているか」は本質的な問題ではありません。

犯罪に巻き込まれるリスクなどが心配になる場合もありますが、その場合も「直接会ったことがない人と連絡ととっているか?」「その人と会う約束や金品のやり取りはないか?」などといいかえれば、重要な情報は確認することができます。

くりかえしになりますが、生活習慣やスマホとの付き合い方を見直し、改善するのは子ども自身です。

親はその「サポーター」あるいは「アドバイザー」であり、決して「取り調べをする刑事」のようにならないように注意する必要があります。

声かけの例)

「〇〇ちゃんがスマホともっと上手に付き合えるようになるために、生活習慣を見直してみない?」

「怒ったり、スマホを取り上げるためのものではないって約束するから、ありのままを教えてね。」

「メールや電話の相手とか言いたくないことは言わなくても大丈夫だよ。」