スマホ依存の症状は?
スマホ依存の状態になると、こころやからだ、行動にどのような変化が現れるのでしょうか?
スマホ依存に陥ると、ひとことでいうと自分の意思で使用をコントロールできなくなります。
すると、スマホの使用頻度や使用時間が過剰となり、スマホが生活の中心となります。
そして、スマホのことばかりを考えるようになり、スマホ以外の活動に対する関心が低下したり、後回しになったりします。
その結果、本来の日常生活や健康に支障がでてしまいます。
例えば、授業や仕事など他にすべきことがあるときにもスマホが気になり集中できなかったり、人と話しているときにもスマホをチェックするようになったり、食事中や入浴中もスマホを手放せなくなったり、スマホの充電が切れたあるいは切れそうになると強い不安におそわれたりします。
まるでスマホが生活の一部にとどまらず、生活の中心あるいはからだの一部になってしまったような状態です。
これらがいわゆる「依存症状」です。
さらに、長い時間スマホを使っていない状態が続くと、いらいらしたり、落ち着きがなくなったりします。
これは、「離脱症状」あるいは「禁断症状」とよばれるものです。
「アルコール依存」の人がお酒を飲まないといらいらしたり、手が震えたりするのと同じです。
(※厳密には、「離脱症状」「禁断症状」は、「物質依存」で起こる現象ですが、「行動嗜癖」でも同じような現象が起こるといわれています。)
これらの症状を含めて、過度なスマホの使用は日常生活やこころ、からだにさまざまな悪影響をもたらします。
日常生活への影響
日常生活の面では、睡眠不足、運動不足になったり、生活が不規則になったりします。
その結果、朝起きられず遅刻や欠席が増えたり、成績が低下します。
さらに、現実世界でのコミュニケーションが少なくなったり、外で出かける機会が減ります。
症状が進行すると、不登校になってしまう場合もあります。
スマホゲームの課金に関連して、金銭のトラブルが発生する可能性もあります。
こころへの影響
依存に陥ると、依存の対象への執着するようになり、反対に他のことやものへの興味や関心が低下します。
また、感情のコントロールが苦手になります。
他にも、無気力や憂うつになったり、怒りっぽくなったり、攻撃的な性格になりやすくなります。
からだへの影響
長時間同じ姿勢で液晶画面を見続けることにより、頭痛やめまい、吐き気、肩こりなどの症状が現れやすくなります。
不眠や視力の低下が起こるおそれもあります。
運動不足によって、筋力や運動能力も低下します、
食生活が乱れることにより、肥満や栄養失調のリスクも高くなります。
子どもの場合は、特にスマホの使用によって受ける影響が大きく、成長や発達にも影響がでるおそれがあります。
スマホ依存の境界線は?
それでは、スマホの使用がどの程度になったら過剰や依存となるのでしょうか?
前述のとおり、2022年現在「スマホ依存」は正式な病気として認められていない状況ですので、明確な基準があるわけではありません。
ただし依存の性質や、他の依存の基準から考えると、やはり「スマホの使用を自分の意思でコントロールできているかどうか」が1つの大きな境界線であるといえます。
例えば、「休みの日は8時間スマホでゲームをしている」という場合はどうでしょうか?
個人的にはやはり長すぎると感じますし、良くない影響が現れる前に何らかの改善が必要であるとは思います。
しかし、「平日は1日1時間程度で、学校にいる間はしたくならない」「他の予定があるときや、試験前など全くゲームをしない日があっても大丈夫」「自分の意思でやめたり中断することができる」などの場合は依存である可能性は低くなります。
スマホの使用を自分の意思でコントロールできており、日常生活や他の活動に支障を来していないからです。
その一方で、「10分に1回SNSをチェックするのが習慣になっており、やめられない」「スマホをチェックできない状況になると不安になる」「授業中にSNSのことばかり気になってまったく集中できない」「スマホが原因で朝起きられず、やめた方がいいと思っているけれどやめられない」という状態でれば、依存に陥っている可能性が高くなります。
スマホの使用を自分の意思でコントロールできなくなってしまっているからです。
ちなみに、確実にスマホ依存かどうかを判定できるわけではありませんが、チェックシートや他の依存症の基準を活用することで、依存の程度と推定することは可能です。
例えば、主に「インターネット依存」の程度を評価できるYDQ(Young Diagnistic Questionnaire for Internet Addiction)というスコアや、「ゲーム依存」の程度を評価できるIGDT-10(Internet Gaming Disorder Test)というスコアが有名です。
また、「スマホ依存」と「ゲーム障害」は共通点が多いため、追加されたばかりのICD-11(国際疾病分類第11版)の「ゲーム障害」診断基準を参考にすることができます。