なぜスマホ依存になってしまうのか?
それではなぜスマホ依存は起こってしまうのでしょうか?
スマホ依存には、基本的に人間なら誰もが持っている「欲求」と「理性」が大きく関わっています。
まずは次の状況を想像してみてください。
『あなたはとてもおなかがすいている状態でパン屋さんに入りました。目の前にはさまざまな種類のパンが並んでおり、店内には焼きたてのパンのにおいがただよっています。』
この状況ではたいていの人が「パンを食べたい」という衝動にかられます。
これが「欲求」の1つである「食欲」です。
にもかかわらず、その場でパンを食べ始める人は普通いません。
みんなレジに並び、代金を支払い、最低でも店の外に出てから買ったパンを食べます。
どうしてこのようなことが可能なのでしょうか?
それは私たち人間には「理性」があるからです。
「代金を支払うまではこのパンはお店のものだから、食べる前に代金を支払う必要がある」
「お会計をするためには、列に並んで順番を待つ必要がある」
「店内で食べたらお店や他のお客さんに迷惑だから、自宅か公園まで行ってから食べた方が望ましい」
のように、多くの人間は「社会のルール」や「道徳」に適合するように、「衝動」や「欲求」を抑えて行動することができるのです。
1人1人が理性的な行動をとることにより、人間社会が成立し、円滑に回っています。
「〇〇したい」「〇〇が欲しい」などの「欲求」はささいなきっかけで自然と沸き上がります。
先ほどパン屋さんの想像をしてから、パンを食べたくなった方も多いと思います。
なぜならば、「欲求」は私たちが生きるために不可欠なものだからです。
例えば、私たちが生きるためには食事をする必要があります。
そのためには「食べたい」と感じる必要があり、さらに食べ物を得るための行動をとることが必要となります。
その原動力となるのが「欲求」です。
他にも「ぐっすり眠りたい」「安全な場所で過ごしたい」「子孫を残したい」といったより原始的、動物的な欲求から「お金が欲しい」「他人から認められたい」「社会の役に立ちたい」といったより人間的な欲求までさまざまな段階の欲求があります。
そしてこの「欲求」というシステムにおいて中心的な役割を担うのが、脳内で分泌される「ドーパミン」という神経伝達物質です。
「ドーパミン」のはたらきによって快感を得たり、再びその快感を得るための行動を私たちに促すのです。
おいしいものを食べたり、楽しいことをしたり、挑戦に成功したりすると脳内で「ドーパミン」が分泌され「快感」が得られます。
そして「快感」は、感情を統括する前頭前野や記憶を司る海馬など他の脳の部位に伝えられます。
このしくみを「報酬系」といいます。
脳のさまざまな部位が「快感」を共有した結果、「またこの快感を得たい」「この快感を得るための行動をしよう」と考えます。
その結果、次に同じ快感を連想させる刺激を受けると、大量の「ドーパミン」が放出され、実際に快感を得るための行動を私たちにとらせようとします。
例えば、パンの絵や写真をみたり、パンのにおいをかいだり、頭の中でパンを想像することで、「パンを食べたい」と感じて、冷蔵庫の中を探したり、パン屋さんへ買いに出かけるという一連の行動を引き起こすのです。
また、ドーパミンはすでに経験したことがある快感だけでなく、新しいことや未知のものへ向かう原動力ともなります。
「快感を得られるかもしれない」「楽しいことが起こるかもしれない」など期待感を駆り立て、行動を促します。
つまりは「衝動」や「欲求」だけでなく、「やる気」や「興味」「好奇心」の源にもなっているのです。
その一方で、人間社会においては常に「欲求」の通りに行動することはできません。
各々が「欲求」のおもむくままに行動していたらあちこちで対立や問題が起こり、社会はめちゃくちゃになってしまいます。
そこで私たちは、「衝動」や「欲求」にかられても、状況に応じて抑制して行動に移さないようにしているのです。
そのはたらきを担っているのが「理性」です。
「理性」は脳の前頭前野という部位が中心となって司っており、「衝動」や「欲求」だけでなく「怒り」や「悲しみ」「不安」などあらゆる感情を統括しています。
つまりは、ドーパミンのはたらきでわきあがった衝動や欲求を、状況に応じて前頭前野が抑えたり、あるいは許可することにより私たちは人間社会に適合した「理性的な行動」をとることができるのです。
例えるなら、「ドーパミン」がアクセル、「前頭前野」がブレーキのような役割をしています。
ただし、「ドーパミン」はさまざまな刺激によって勝手にわきあがり自分の意思では調節できません。
つまり、「勝手にアクセルがかかる自動車に乗り、ブレーキのみで速度をコントロールしながら運転する」ようなものです。
前頭前野による感情をコントロールがいかに重要であるがわかります。
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