スマホ依存が起こるしくみ
それではどのように依存は形成されるのでしょうか?
依存に陥る主な要因といわれているのが「報酬系の強化」という現象です。
前述の通り、「ドーパミン」のはたらきによって、人間は「もっと快感を得たい」「あの快感を再び得るために行動しよう」と考えます。
実際に同じ快感を得ることができれば、さらに大量のドーパミンが分泌され、快感が脳の他の部位へ伝えられる「報酬系」がはたらきます。
そして、再び同じ快感を得るための行動をくりかえすのです。
つまり、
「快感を得る」→「再び同じ快感を得たくなる」→「快感を得るために必要な行動をとる」→「快感を得る」→・・・
のように同じ報酬系のループを何周もくりかえすのです。
そしてこのループは回をおうごとに強化され、より強い欲求を生むようになります。
これが「報酬系の強化」という現象です。
くりかえし同じ快感を得ることにより、どんどん欲求が強くなり、それが過剰となるとその対象ばかりを求めるようになり「依存」に陥ってしまいます。
もちろん、「報酬系の強化」イコール「依存」というわけではありません。
もともとドーパミンや報酬系は、食料を得たり、子孫を残したり、社会で活躍したりと、生きるために必要なものを得るための重要なしくみです。
「努力(行動)する」→「成功する」→「快感を得る」→「さらなる努力(行動)をする」→・・・
という試行錯誤の過程はどのような挑戦にも必要なものでもあります。
そして、「報酬系の強化」は、「快感」を利用して生きるために必要なものを効率良く得ることができる極めて合理的なしくみといえます。
しかし、そのしくみが過剰にはたらき依存に陥ってしまうと、本来生きるために必要なものへ向かうはずの関心や興味が、依存対象に集中してしまい、欲求の本来の機能を十分に果たすことができなくなってしまいます。
それでは、どのような場合にその一線を超えて依存に陥ってしまうのでしょうか?
依存に陥るかどうかを分ける大きな要因の1つは「容易に快感を得られる」ことです。
本来、快感はそう簡単に得られるものではありません。
例えば、私たちの祖先は日々の食料を得るためにも命がけでした。
安全が確保されモノであふれる現代でも、食料やさまざまなサービスと交換できるお金を得るためには相応の労働が必要となります。
スポーツや勉強、仕事においても、結果を出して快感を得るためには失敗や試行錯誤をくりかえしたり、結果がでないときも耐えたり、くりかえし努力する必要があります。
一方で、依存の原因になりやすいお酒やギャンブルなどは、苦労をすることなく手軽に大きな快感を得ることができます。
ほとんどの人にとっては、同じ快感を得るための努力は少ない方が望ましいので、容易に快感を得られるものや行動には強い魅力を感じます。
そして、容易に快感を得られる特定の行為や物質の使用ばかりをくりかえし求めるようになり、驚くような速さで報酬系が強化され、依存が形成されるのです。
極端な例ですが、もし仮にお酒を飲んだり、ギャンブルをするために毎回標高1000mの山の頂上へ行く必要があれば、アルコール依存やギャンブル依存に陥る人は激減することが予想されます。
快感を得られるものであれば理論上は何でも依存に陥る可能性はありますが、依存になりやすいものとそうでないものがあるのにはこのような理由があります。
ちなみに、そのように考えるとスマホはどうでしょうか?
スマホには私たちが容易に快感を得られるコンテンツがぎっしりとつめこまれています。
例えば、SNSに投稿すると世界中の人から『いいね』がもらえます。
直接会わなくても、複数の人と同時にコミュニケーションをとることができます。
プレイ時間に比例して無限にゲームの中で強くなれます。課金すればさらにかんたんに強くなれます。
おもしろい動画を次々とみることができます。
これだけ魅力的な活動がスマホ1台と月々の通信料があれば全て可能になります。
しかも、常に持ち歩き、どこでもすぐに使用することができます。
残念ながらスマホは依存になりやすい側に分類されることは明らかなようです。
依存は進行する
依存は早期に対策を取らないと進行してしまいます。
アルコール依存を例にとります。
アルコール依存に陥っている人は、だんだんとお酒の量やアルコール度数が増え、さらに「日中からお酒を飲むようになる」といったように飲酒の頻度が高くなる傾向があります。
前述の通り、くりかえし快感を得ることによって「報酬系の強化」が起こり、これが依存が進行する最も大きな要因となります。
しかし、他にも重要な要因が2つあります。
それが「耐性」と「離脱症状」です。
「耐性」とは、同じ快感を得るために必要な刺激の量が増加する現象です。
いいかえると、同じ刺激を受けても、少しずつ得られる快感が少なくなってしまうのです。
例えば、はじめは缶ビール1本で快感を得られたのに、同じ快感を得るために必要なお酒の量が増えたり、アルコール度数が高くなってしまうのです。
その結果、今まで通りの快感を得るためにどんどん強いお酒を大量に飲むようになってしまうのです。
「離脱症状」とは、依存しているものを中断したときに不快感を感じる現象です。
例えば、アルコール依存の人では、お酒を飲んでいない時間が長くなると、手が震えたり、いらいらしたりします。
その症状や不快感を解消するために再びお酒を飲み、離脱症状が現れるとまたお酒をのむといったようにループを形成してしまうのです。
ちなみに耐性も離脱症状も主に物質依存で起こる現象ですが、行動嗜癖でも似たような症状が現れることがわかっています。
ちなみに、スマホ依存では手が震えたりといった症状は通常みられませんが、スマホを使わない状態が続くと落ちつかずいらいらしたり、頭がぼーっとしたり、集中力が続かなかったり、やる気が低下したりといった症状が現れます。
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