スマホが子どもに与える影響と危険性

子どもは大人よりもスマホ依存になりやすい

子どものスマホ依存も、基本的には大人のスマホ依存と同じしくみで起こり、同じような症状が現れます。

しかし、子どものスマホ使用は大人以上に注意です。

なぜなら、「子どもは大人よりもスマホ依存に陥りやすい」からです。

なぜ子どもの方がスマホ依存になりやすいのでしょうか?

1つめの理由は、「子どもの方が衝動や欲求が強い」ことです。

「衝動」や「欲求」、「興味」や「好奇心」の源である「ドーパミン」の分泌や活動は10代で最も活発となり、年齢とともに減少するといわれています。

子どもや若い人の方が、新しいことに対する「興味」や「好奇心」が強く、さまざまな刺激に対する反応が敏感で、大人にとっては信じられないほどの行動力があることは共通認識であると考えてもよいと思います。

スマホの刺激に対する反応もより敏感であり、ドーパミンの分泌が促進され、報酬系の強化を通じて依存状態に陥りやすくなります。

2つめの理由は、「子どもは理性が未発達である」ことです。

「理性」を司っている前頭前野は衝動や欲望の他、怒りや恐怖、不安などあらゆる感情を制御している部位ですが、脳の中では最も完成が遅く25~30歳頃に完成するといわれています。

つまり、子どもや若年層は大人と比べて「ブレーキ」がききにくく、「衝動」や「欲求」に負けてしまう可能性が大人よりも高いのです。

以上の理由から、子どもや若年層では、「アクセル」となる「ドーパミン」の分泌が活発で、「ブレーキ」となる前頭前野が大人よりも未発達であることから、感情をコントロールしきれずに依存に陥ってしまうリスクが高くなるのです。

スマホ依存では予防が特に重要

子どもに限った話ではありませんが、スマホを含めた依存は「予防」が極めて重要です。

なぜならば、「一度依存の状態に陥ってしまうと、脱却するのは容易ではない」からです。

そもそも報酬系は「生きるために必要なものを得るための動機づけとそのための行動を起こさせる」しくみです。

一度形成され、さらにがちがちに強化された「報酬系」を解きほぐす難しさは容易に想像がつきます。

「生きるために必要な重要なもの」と信じ切っている脳に対して「実はそこまで必要ではありませんでした」と説得するようなものです。

そこで、依存に陥る前、それも可能な限り早い段階で「報酬系の強化」を止める必要があるのです。

スマホ依存の場合は、今現在確立された治療法や治療薬もありません。

「アルコール依存」や「薬物依存」の治療も容易ではないことは広く知られていますが、日常生活で当たり前のように使われているスマホに対する依存は他の依存とそれ以上に難しい可能性が高いと推測されます。

前頭前野が発達で、ドーパミン分泌が活発な子どもでは、よりスマホと距離をとることがより難しくなります。

スマホの使用が子どもに与える影響

それではスマホの使用頻度や使用時間が長くなると、子どもたちにどのような影響を与えるのでしょうか?

単純に、スマホを使用する時間の分だけ他の時間が少なくなる場合はもちろん、スマホの使用自体が影響を与える場合、長期的に成長・発達に影響を与える場合などさまざまな影響が想定されます。

子どもが健康的に日常を過ごし、バランスのとれた成長・発達をするために特に重要なものは「食事」「睡眠」「運動」「コミュニケーション」「経験」の5つであると私は考えています。

1日3食規則正しい食事で活動や成長に必要な栄養素をとり、毎日同じ時間に寝て同じ時間に起きて十分な睡眠をとり、しっかりとからだを動かし、親や友達、先輩後輩、先生などさまざまなな人とコミュニケーションをとり、新しいことを経験したりチャレンジしたり試行錯誤して成功する体験を得たりすることで、生きるために必要なさまざまな能力を身につけることができます。

いずれも子どもにとって不可欠なものではありますが、この中でも特に不足しやすく重要であるのが「睡眠」です。

1日は24時間と決まっており、スマホの使用時間が長くなると、必然的に他の時間がけずられてしまいます。

そして真っ先にけずられやすいのが「睡眠時間」です。

子どもにとっての「睡眠」の重要性はこの後くわしく説明させていただきますが、私の個人的な印象でも、十分な睡眠を取れている子はバイタリティにあふれ、表情も明るい傾向があり、運動と並んで子どもにとって最も重要な要素ではないかと考えています。