睡眠不足
スマホの使用によって子どもたちが睡眠不足に陥るケースは非常に多くなっています。
例えば、スマホゲームや動画視聴、SNSに夢中になって就寝時間が遅くなってしまう場合や、グループメールでやめどきを見失ってしまったり、メールをみて「既読」をつけてしまったばっかりに友達との暗黙のルールによって返信せざるを得なくなる場合などです。
実際、スマホの使用が睡眠不足の原因になることがわかっています。
夜になると脳からメラトニンという物質が分泌され、私たちを睡眠へと誘導します。
しかし、スマホなどやタブレットなどのブルーライトを受けるとメラトニンの分泌が抑制され、睡眠に入りにくくなります。
メラトニンには睡眠状態を維持するはたらきもあるため、十分なメラトニンが生成されないと睡眠の質が下がってしまいます。
さらに、メールやアプリの通知によって睡眠が中断されてしまいます。
睡眠は毎日元気に活動するためはもちろん、子どもの成長・発達にも不可欠です。
睡眠不足の状態となると、さまざまな能力が低下することがわかっています。
まず、睡眠が不足すると集中力が低下します。
また、ささいなことに腹が立ったり、不安を感じたりといったように情緒が不安定になります。
大人の方でも、眠気があると頭がはたらかず、いらいらしやすいという経験は1度や2度ではないと思います。
毎日同じ時間に就寝する子どもは、そうでない子と比べて問題行動が少ないという報告もあります。
さらには記憶力が低下します。
「朝食に食べたもの」や「テレビでみたニュースの内容」など私たちの生活の中で起こった出来事や情報はいったん「短期記憶」となります。
たくさんの「短期記憶」の中で、重要なものと脳に判断された記憶のみが「長期記憶」となり長い期間保存されるのですが、この「短期記憶」→「長期記憶」への仕分けや変換作業は、睡眠中、特に深い睡眠中に起こるのです。
つまり、十分な睡眠がとれていないと必要な記憶を残すことができないのです。
暗記をするときに間に1時間の昼寝をはさんだ方が多くのことを覚えられたという報告もあります。
さらに、睡眠不足の状態では「ワーキングメモリー」という作業や思考のときに必要となる「超短期記憶」のはたらきも低下します。
記憶力や集中力が下がると学力やその他の能力に悪い影響を及ぼすことは明らかです。
②運動不足
スマホに費やす時間が長くなることにより、運動時間が短くなるおそれがあります。
さらにコロナ禍の影響もあり、子どもたちの運動時間は減少傾向にあります。
運動も子どもの健康や、成長・発達において最も重要な要素の1つです。
まず、運動により、適切な筋力や身体能力が鍛えられます。
また、運動によってドーパミンの分泌が促進されるため、集中力が高くなります。
さらには、運動特に有酸素運動によって前頭前野や海馬へ十分な血流を得られることによって、記憶力も高くなります。
集中力や記憶力は「考える力」の根幹をなすものであり、あらゆる認知能力の向上が期待できます。
運動にはストレスを軽減する効果もあるため、相乗効果で感情のコントロールを行いやすくなります。
他にも、睡眠の質が改善されたり、食欲が適切になる効果もあります。
十分な運動を行っていない場合の影響についてはこれらの効果の裏返しです。
年齢相当の筋力や身体能力が身につかないことでけがをしやすくなったり、集中力や記憶力が低下したり、ストレスを感じやすく感情のコントロールができずに怒りっぽくなったり、睡眠の質が下がり寝ても疲れがとれなかったり、食欲が低下したり反対に過食になったりなどの影響がでるかもしれません。
③学力の低下
長時間のスマホ使用が学力に与える影響についても指摘されています。
東北大学の研究では、1日のスマホ使用時間が長くなるほどテストの点数が低くなる傾向がみられました。
シンプルに長時間スマホを使用することによって、学習時間が減ることによって学力が低下するリスクがあります。
さらに、前述の通り過度なスマホ使用は運動不足や睡眠不足の原因にもなります。
運動不足や睡眠不足によって集中力や記憶力など「考える力」が低下することにより学習効率が低下します。
学習効果は、学習法や学習環境、モチベーションなどさまざまな要素の影響も受けますが、「集中力」と「学習時間」が特に重要な要素となります。
例えば、「10」の集中力で3時間勉強して10×3=30の学習効果を得られるとして、「3」の集中力で同じ時間勉強しても3×3=9の学習効果しか得ることができません。
「集中力」や「学習効率」は正確に数値化できるものではないのであくまで推測の域を出ませんが、「だらだらと長時間学習する」よりも「集中して短時間学習する」方が実力がついた実感を得られた経験をされたことがある方も少なくないと思います。
また、集中力は学習や作業を続けているうちに高まってくることがわかっています。
車が走るときと同じで、最高時速が100km/時であるとしても、スタートと同時に100km/時出せるわけではありません。
アクセルを踏み始めてからだんだんと速度が上がっていき、100km/時まで到達します。
もし途中でブレーキを踏んで40km/時程度まで速度が落ちてしまえば、再び100km/時まで戻すのにさらに時間がかかってしまいます。
つまりはブレーキを踏むたびに実際の平均速度はどんどん遅くなってしまうのです。
前述の通り、スマホは集中力に急ブレーキをかけます。
メールやアプリの通知が入るたびに、スマホが視界に入るたびにせっかく上がってきた集中力が落ちてしまいます。
例えば30分スマホを使用するとその後2時間は集中力が低下するといわれています。
このような学習の仕方では、断続渋滞している道路を走っているようなもので、高い集中力を維持することができないのです。
④食欲の低下、過食
スマホの使用頻度が高くなると食欲にも影響がでます。
興味や関心の対象がスマホばかりに向くことによって、食事を含めた他のことやものに対する興味や関心が低下しまうことによります。
実際、スマホに限らず依存症になると、食欲が減退することが多いです。
反対に、ストレスや感情のコントロールを適切に行うころができず、過食に陥る場合もあります。
また、運動不足によって食欲が低下する影響もあります。
⑤コミュニケーション力の低下
泣くことでしか気持ちを意思を伝えられなかった赤ちゃんは、やがて「んー」「まー」などの「喃語」という大人が聞き取れない程度のことばを発するようになります。
その後、いくつかの単語をいえるようになり、大人やきょうだいの真似をしながら少しずつ話すことができるようになります。
人間同士のコミュニケーションは実は「表情」や「しぐさ」など非言語的な要素が占める割合が大きいといわれています。
そして、言葉以外の情報から感情や意図を読み取れるようになるには、言葉を覚えるよりも長い時間を要することがわかっています。
家族だけでなく、同級生、先輩や後輩、学校や園の先生、恋人などさまざまな人と顔をみながらコミュニケーションすることが必要となります。
スマホの使用時間が長くなり、直接的なコミュニケーションの機会が減少すると、相手の感情や意図を読み取る能力が十分つかない可能性があります。
コロナ禍のマスク生活によってお互いの表情がわからないことが子どもたちに良くない影響をもたらさないかどうかも気がかりです。
⑥視力の低下
これはテレビやパソコンにもいえることですが、長時間スクリーンを注視することにより視力に影響が現れる可能性があります。
長時間のスマホ使用が視力を低下させるという明らかなデータはありませんが、テレビやパソコンよりも小さい画面で、動画や細かい文字を見続けることで何も影響がないということは考えにくいです。
また、視力すなわちピント調節の機能に限らず、ブルーライトや強い光を見続けることで少なくとも眼の疲労は起こりやすくなることが予測されます。
- 1
- 2