何のために社会を勉強するの?
文部科学省の指導要領では、「社会的な見方・考え方を働かせ、課題を追求したり解決したりする活動を通して、広い視野に立ち、グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の形成者に必要な公民としての資質・能力の基礎を育成するため」とされています。
私は「日本という国を知る」教科と言いかえています。
日本のことをあまり知らない外国の方などから「日本ってどんな国?」と聞かれたときすらすらと答えられますか?
社会の勉強をすると、日本とはどのようなところで、どのようなひとが住み、どのような仕組みやルールで動いており、世界の中でどのような立場にあるかなどを知ることができます。
日本以外の地理や歴史、政治経済を勉強するのも「世界の国の1つである日本」を知るためだと考えることができます。
国が国であるための三大要素とよばれるものがあります。
領域、人民、主権の3つです。
領域は「ここまでが自分の国」という境界です。領土と領海、そしてその上空の領海です。
人民はあなたを含めた国民みんなです。
主権は統治権ともいわれ、「国がどのような仕組みや決まりで動くか」を自分たちで決められる権利です。
この3つは国にとって最優先で守らなければならない最も大切なものです。
社会ではこの3つに関わる知識を中心に勉強します。
社会で「日本という国」について学び、国語で「日本人」について学び、「日本」について語ることができると私は考えています。
何のために地理を勉強するの?
地理では、簡単に言うと「日本とはどのようなところか?」を勉強します。
日本はどのような広さか、どのような山や川があるのか、何人くらいひとが住んでいるのか、どのような生活をしているのか、どのような仕事をしているかなど、さまざまな切り口で日本の特色を勉強します。
山地山脈や川のなまえなどの暗記は大切ですが、暗記だけではなかなか興味を持ちにくいかもしれません。
しかし、他の教科と同じように暗記した知識同士がつながってくると、一気におもしろくなってきます。
例えば「讃岐うどん」に代表されるように香川県ではうどんが有名ですね。
都道府県別のうどん消費量も日本一です。
それではなぜ香川県がうどん日本一の県となったのでしょうか?
香川県の場所はわかりますか?
瀬戸内海に面した四国地方の県ですね。
四国山地と中国山地にはさまれている瀬戸内海では雨や雪を降らす季節風がさえぎられ、一年を通して雨や雪があまり降らないという特徴があります。
さらに香川では河の流れが急でせっかく降った雨もすぐに海へ流れてしまいます。
すると多くの水を得ることが難しく、水不足が起こりやすくなります。
日本人の主食である米をつくるためには大量の水が必要となるのでこれは大問題です。
そこで「ため池」をたくさんつくるなど工夫や努力を重ねて、水の確保に成功しました。
そのなごりで県内には16000以上のため池が残っています。
米作りには不利な環境でしたが、一方でうどんの原材料である小麦の栽培には有利な環境だったのです。
もともと小麦は雨が多く湿度の高い環境では育ちにくく、日本では気候が適していない地域が多いのです。
その点、香川の雨が少なく乾燥した気候は小麦の栽培に適していたのです。
そこで、米を栽培しない冬に小麦を栽培する裏作がさかんになったのです。
さらに、雨が少なく遠浅である瀬戸内海は塩作りにも適しており、うどんには不可欠の塩や醤油づくりにも有利でした。
「水を得にくい」という弱点を克服するだけでなく、逆に活用してきた歴史の結果が現在につながっているのです。
もっと香川のことや他の都道府県のことも知りたくなってきませんか?
有名な観光地をめぐるだけでも楽しいですが、その土地の背景を知ってから訪れると何倍も楽しめます。
地理を勉強すると旅行もさらに楽しくなります。
また、地理は必ず地図を見ながら勉強するようにしてください。
何のために歴史を勉強するの?
歴史を勉強する最大の意義の1つは、「過去から学び、現在や未来に活かす」ことです。
「歴史はくりかえす」ということばがありますね。
時代が変わっても本質は変わらないことはあります。
例えば、人類は何度も戦争など争いをくりかえています。
1つ1つの争いの理由は異なりますが、権力の争いや利益の奪い合いなど本質的には共通の原因であることも少なくありません。
争いに限らず、災害や政治、経済など過去から学ぶことはたくさんあります。
過去から学び、現在、そして未来へ活かすことが歴史を学ぶ大きな意味の1つです。
良いことはそのまま、あるいは形を変えてお手本とし、悪いことは「同じことが起こらないためにはどうすえばよいか?」「起こってしまったときはどのように対処すればよいか?」を考えることができるのです。
ヒトは歴史から学ぶことができる動物ですが、「歴史から学ぶことができた歴史」と「歴史から学ぶことができなかった歴史」の両方あることも歴史を勉強するとよくわかります。
日本の歴史だけでも旧石器時代から現在までを勉強しなければならないでどうしても「〇〇年に何が起こった」という出来事の暗記になりがちです。
しかし、教科書にのっている出来事は、いずれもその後の歴史に大きな影響を与えた出来事であり、その関係性まで知るとより理解がしやすくなります。
先ほど長篠の戦いの話にも出てきた鉄砲伝来を例にとります。
1543年ポルトガル人が種子島へ漂着した際に鉄砲が伝わり、1549年にキリスト教が伝わりました。また、その後日本とポルトガルの間で南蛮貿易が始まりました。
これだけでも、「なんかポルトガル人が漂着したのをきっかけにいろいろ伝えてくれたんだな」という理解はできますが、その背景を勉強すると全くの偶然というわけでもなかったようです。
実はポルトガルはこの時代、もともとアジア進出を計画していたのです。
そして種子島へ漂着したポルトガル人が乗っていたのは、実はポルトガルの船ではなくすでに交流のあった明(中国)の船だったのです。
はじめに種子島へ漂着したのは偶然といわれていますが、もともとアジアの国と貿易をし、キリスト教を広めたかったポルトガルがその後日本にキリスト教を伝えたり、南蛮貿易を始めたことは自然な流れだったといえます。
また、鉄砲伝来によってその後の戦い方が大きく変わり最強の騎馬隊を倒したように、その後の日本に大きな影響を与えたことは言うまでもありません。
歴史は他の教科以上に知識同士のつながりが大きいです。
理想は全てのできごとや人物を知識の鎖でつなげてしまい、どの情報からでも知識を取り出せるようになる状態です。
何のために公民を勉強するの?
公民では主に政治や経済や、国際社会などを勉強します。
「現在を生きるひとの活動」について学ぶ分野と私は言いかえています。
公民を勉強することにより、社会の仕組みが分かったり、現在社会で起きていることを理解しやすくなり、最もすぐにわかりやすく役に立つ分野の1つでもあります。
その一方で、常に勉強する内容が変化する分野でもあります。
例えば、私が高校生のときに受けた授業では、
「このまま少子高齢化がすすめば高齢化率が20%を超え、働く世代の負担が増える」と教わりましたが、この知識のまま、得意げに「ここままいくと20%を超えちゃうらしいよ」と話しても、「いつの話をしてるの?20%なんかとっくに超えてるし、いまはもっと上がり続けているよ」と笑われてしまいます。
例えば10年後に方程式の解き方や漢字の読み方が変わっている可能性は極めて低いです。
しかし社会が変わり続ける以上、公民の内容は変わり続けます。
そして公民で勉強したことが、いずれ近現代の歴史へと変わっていきます。
つまり社会で生きていく限り、勉強し続けて新しい知識を得つづけるべき分野といえます。
また、学校の授業だけでなく、ニュースを見たり、新聞を読むことでも勉強できるのでぜひ活用してください。
まとめ
社会を勉強すると、「日本という国」について知ることができる!
社会を勉強すると、「日本がどのような国か?」を知ることができる!
地理を勉強すると、「日本はどのような場所か?」を知ることができる!
歴史を勉強すると、過去から学び未来に活かすことができる!
公民を勉強すると、「現在を生きるひとの活動」を知ることができる!