何のために働くのか?

仕事に求めるものを明確にする

ここまで説明したように、働く目的は1つではありません。

そして、「生きる」ことも「コミュニティの一員としての役割」も「仕事自体のやりがい」も全て重要であり、どれか1つを選ぶようなものではありません。

また、必ずしも「働く」こと自体に幸せを求める必要はなく、「仕事はお金をかせぐための手段」と割り切り、趣味など仕事以外に幸せを求める生き方も1つの正解だと思います。

その一方で、就職先や転職先を選ぶときや、現在の仕事を続けるべきが悩んだときに、「自分の中での仕事の位置づけ」や「自分が仕事に求めること」を明確にしておくと、より具体的に考えやすくなります。

そこで、ここでは「自分が仕事に求めるものを明確にする」方法を2つ紹介します。

①「欲求5段階説」で考える

前述した、「マズローの欲求5段階説」を使って考えることで、「仕事によって自分がどの程度充実感を得られているか」を推測することができます。

より高い欲求のレベルを満たすことができれば、より内面的、人間的な充実感を得やすくなるため、いわゆる「仕事のやりがい」を感じやすくなります。

現在の仕事が「高いレベルの欲求を満たすことができているか?」をぜひ1度考えてみてください。

もちろん、実際に仕事を始めてみて持っていたイメージとのギャップに気づく場合もありますし、新しい仕事を始めて間もないときはわからないことや失敗の連続で、ある程度慣れるまでは判断することは難しいかもしれません。

そこで、これから就活する方や、転職を考えている方、入職してからの期間が短い方は、可能な限りでよいので「その仕事を続けた先に高いレベルの欲求まで到達しそうか?」を考えてみてください。

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②「限定要因説」で考える

生物学などさまざまな学問で使われる考え方に「限定要因説」とよばれるものがあります。

特定の現象や事象について、「全体のパフォーマンスにその要素が最も影響を与えているか?」という考え方です。

もっとわかりやすくいうと「1番不足しているものは何か?」ということであり、その不足しているものが「限定要因」です。

 

例えば、植物の光合成に必要なものは「水」「二酸化炭素」「光」です。

「水」と「二酸化炭素」が十分あり「光」が不足している環境では、「光」が「限定要因」となり「光の強さ」を強くするとそれに比例して光合成速度が上昇します。

その一方で砂漠のように「光」よりも「水」が不足している環境では、「光」ではなく「水」が「限定要因」となります。

この場合、「光の強さ」をいくら高めても光合成速度は上昇せず、「水の量」を増やすことで光合成速度は上昇します。

 

「長さの異なる板で壁をつくり、そこに水をためる」とします。

いくら他の板が長くても1番短い板の長さ以上の水位には水をためることができませんね。

より多くの水をためるためには、この「1番短い板」を長くする必要がありますね。

 

この考え方が仕事にも応用できます。

まずは、「自分が手に入れたいもの」を思いつく限り書き出してみます。

例えば、「生活や趣味に必要となるお金」「家族とゆっくり過ごす時間」「友人や親族に誇れる社会的地位」「社会の役に立っているという実感」などです。

そして、その中で「最も不足している要素は何か?」を考えてみてください。

他の要素に比べて著しく満足できてない場合は、それが幸福度の「限定要因」となっているかもしれません。

まとめ

新卒の就職のときも転職のときも、「仕事を選ぶ」ことは人生の大きな分岐点です。

自分や家族の生活を守りながら、「自分がしたいこと」「社会における自分の役割」「人生における仕事の位置づけ」とうまく折り合いをつけ、最終的には自分の意思で決める必要があります。

「お金なんかよりもやりがいが重要」「好きなことを仕事にすればお金はあとからついてくる」などのような無責任なアドバイスは、その人の人生を背負う覚悟がなければ本来口が裂けても言えません。

そのようなアドバイスをしてくる人にとっては真実なのかもしれませんが、それはその人が構築してきた人生観や仕事観が背景にあってはじめて成立するものであり、誰にでもあてはまるわけではありません。

自分にとっての「答え」は自分自身の気持ちと向き合い、相談することでしかたどりつくことができません。

一度しかない人生だからこそ、他でもないあなた自身が考え、決断してください。